「お前、またやられたのか」
俺がそういうと、屋上で膝をかかえてうずくまっていた花子は顔をあげた。…うわ、どんだけぼこられたんだよ。どんどん体についていく痣の数なんて数えたら数え切れない。痣の上からまた殴られたりするのだから、前からあった痣が悪化した――なんていうのも少なくないんだろう。
「……むかついたのよ」
「何がだよ」
「『跡部様に近づくな』だの『忍足様を独占しようなんてむかつく』だの言いがかりつけちゃってさ」
「………」
「誰があんなやつら好きになるか!って感じ!跡部はナルシーだし、忍足はロリコンだし。ついでに宍戸はきもいし。」
「きもいってなんだよ。……とりあえず、お前保健室いったほうがいいぞ」
「大丈夫だって。これぐらいもう慣れたし」
そういって笑っている花子は強いな、と思った。……1人で立ち向かうっていうのはどんなに強い勇気がいるのだろうか。
俺には理解しがたい。
だけど、頑張っているコイツの背中を押すことぐらいなら俺にはできるだろう。俺は花子の腕を掴むと、思い切りひいて抱き寄せた。たまたま掴んだ腕の部分に痣があったのだろう、花子は「痛っ!」と叫ぶと俺の腕の中でジタバタと暴れだす。
「ぎゃー!暴力反対!いきなり何?!あんたまで私の敵か?!敵なのか?!」
「……ちげぇっつーの。お前さ、いい加減泣いてもいいんじゃねーか」
そういうと、暴れていた花子は急に静かになった。
「……何よ、宍戸のくせに生意気な」
「……俺にはお前が強がってるようにしか見えねーんだよ。学校やめてもおかしくねーのに、何でそこまで頑張れるんだよ」
「……だって、宍戸が言ったじゃん。『全国大会連れてってやる』って。それを見届けなきゃ死んでも死にきれないよ」
あぁ、大馬鹿だ。大馬鹿だな、コイツは。いや、馬鹿なのは俺のほうだったのだろうか。そんな約束のために、こいつを縛らせて――。
「だから私は頑張れるんだよ」
そういって笑った花子が、何だか美しく見えた。
ローリンガール
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イメージソング「ローリンガール/wowaka(現実逃避P)」