「ひやっふううううう!」


そういって海にザバン!と飛び込めば、後ろで呆れ顔の面々。……なんだ、リョーマ。言いたいことがあるなら言えばいいじゃないか、この生意気なピュアボーイめ!



「花子ってば、元気だにゃ〜…」


いつも元気な菊丸も、私を見てドン引き。…そうです、今日は青学のメンバーと海にきてるのです。


海で溺れる




「ねー、手塚は海に入らないの?」


「……遠慮しておく」


どうしても海に入ろうとしない手塚。…何故?まあ不二は日焼けしたくないからパラソルからでたくないだろうし、最初から声はかけないけど。



「――手塚が田中のめんどうをみるのが嫌で海に入らない確立90%」


「なぬ?!」


なんだ乾。私の心にグサリときたよ、今の言葉。…いいよ、不二も乾も手塚もパラソルのところで涼んでればいいよ!夏なのに日焼けできなくってひきこもってたって思われればいいんだ、ちきしょう!



「……いや、別にそういうわけじゃ…」


「い、いいもん。いいもん、別に…。手塚なんてもう知らないんだからっ!」


「花子さ、そのツンデレ設定痛いからやめなよ」


最後に魔王様から釘をうたれ、半ベソをかきながら海に入れば菊丸が頭をなでてくれた。…優しいな、このやろう。



「じゃ、じゃあさ!あっちの岩に手ついて戻ってくるってのはどう?!で、ビリの人は罰ゲーム!」


「おおー…英二先輩それいいっすね!」


桃城は賛成しているが海堂はというと、なんだか気合をいれて「ふしゅーふしゅー」と呟いているのが聞こえる。…早くも桃城に対抗心を燃やしているのか、まあこの2人はほうっておこう。




「じゃあ、みんないちについたかい?よーい――…」


大石が審判をすることになったのだが、よーいといった時点で桃城と海堂がフライングして先に進んでいってしまった。…まあ、あの2人が罰ゲームなのは確定である。


苦笑いしながら、大石がもう一度「よーいどん!」と言った。



「オラオラ!バーニィイイイング!」



「ぎゃあう!」


隣にいるタカさんの水がバシャバシャと顔にかかる。…ひどいよ、タカさん…。なんて思ってるころには、タカさんはすでに遠く遥かかなたにいたのだった。



バシャバシャ。



泳ぎはまあまあ、できる。けど、やっぱりレギュラーにはかなうはずもなく、ものすごい大差をつけられている。何だか恥ずかしくなってきた、なんで参加したんだろう私。




「(パラソルにいればよかったかな…)」


なんて、考えた瞬間――…右足が、つった。



「!!!」


やばい!ここは、もう足がつく場所じゃないし、誰もいない…!



「――……」


必死に体をうかせようとバシャバシャと水をかくが、それもむなしく私の体は水中に沈んでいく。ああ…彼らの全国大会優勝する光景すら見ることができず、私は死ぬのか。

心残りはたくさんあるけど、1番心残りなのはそれだなあ…。


かすんでいく視界。呼吸ができない。力なくうようよと漂う私の手首を、何かが掴んだ。


そこで私の意識は途切れた。



.

..


...




「――、――…、花子先輩!」


「………っ、あ、れ…?」


目を覚ませばリョーマの心配そうな顔がズームであった。その後ろには、私を囲むようにして青学のメンバー達が眉根をよせて、私を見ている。あ、そうだ。私、足つって溺れて――。



「……生きてる?」


「当たり前じゃないっすか!もう、心配したんすよ!」


「……そっか」



ああ、生きてたんだ。じわりと涙がうかんで、ぽろぽろと落ちた。ああ、よかった。生きてるんだ、私。




「うわぁああぁぁあああん!リョーマの海パンが一生見られないと思った!」


そこっすか。


そういいながらも、ちょっとデレてるリョーマが可愛くて抱きついた。ああ、可愛い。


リョーマの頭の上にあごをのせてごろごろしていると、乾がぬっとでてくる。



「田中、何か忘れてないか」


「……え?記憶喪失?」


そうじゃない。記憶とかじゃなくて、だな。――誰が助けてくれたんだって不思議に思わないのか」


「あああああ!誰なの?!」


「………手塚、だよ」


そういって乾が眼鏡をくいっとあげた。はぁ。手塚。手塚ですか。………。


なぬぅうううう?!




「え?!手塚が?!」


「ああ、ちなみに人工こ「乾、そこまでにしろ」……仕方ない、黙っておこう」



いや、あの、人工呼吸したんですか?黙っておこうとか言われても半分きいただけで単語思いついたんだけど…。聞かなかったことにしよう。




「あ、そ、その…手塚、ごめん」


「………」


「助けてくれて、ありがと」


き…キス、したんだ。と思ったらまともに顔をむけることができない。ちらりと手塚をみれば、手塚も同様に少しうつむいたままで「……お前は、ほうっておけないやつだ」と呟いたのが聞こえた。




どういうこと?と聞き返す暇もなく、



「田中は今日1日海に入るな」


と言い渡された。――鬼畜ですね、手塚さん。まあ、私が悪いんだけど。











「(手塚手塚)」


「(なんだ)」


「(一緒に砂でお城作ろうよ。暇だ)」


「(…………断る)」


「(何で?!海きたのに読書してちゃ勿体無いよ?!)」


「(読書かつお前の監視があるからな。十分だ)」


「(………。そうですか…。)」


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