「うぎゃあぁぁああ!もうこんな時間なのおおお?!お母さんなんで起こしてくれなかったの?!」


「起こしたけど寝たのはあんたじゃない」


「ううーくっそー!!」


お母さんに怒っていてもしょうがない。…日曜日の後ってどうしても、ついつい二度寝しちゃうんだよね。



「お母さん、いってきまーす!」


「朝食はどうすんの?」


「……うぐ…っ」


「ほら、くわえていきなさい」


食パンを焼いただけのもの(せめてジャムのっけてくれても…)をくわえながら、家をとびでてダッシュ。通学途中の学生も社会人も、みんなが振り返るが気にしない。遅刻してたまるかぁぁあああぁああ!




「危ない!」



遠くから、声が聞こえた。叫び声だ。その声に気をとられ、足をとめた瞬間に頭部に激痛が走り私は思い切り尻餅をついた。それと同時にくわえていたパンも、ボトリと落とす。



「うわー!あーあーあー…」


土にまみれたパンを残念に思いながらも、コロコロと転がる黄色いテニスボールを拾った。




「大丈夫っすか」


「……大丈夫っす」


「そっすか…あ、パン……」



白い帽子を深くかぶった少年が、落ちているパンを見て申し訳なさそうにしている。





「あ…パンはいいよ、くわえてた私も悪かったし」


「でも、」


「いいよ、青少年。ほら、向こうにいるトゲトゲ頭の少年が心配そうにしてるから早く戻りなよ」


「………っ」


少年は、どうにも納得がいかない。といった顔をしている。だからって、謝罪…してもらいたいわけでも、物がほしいわけでもないし。

ってか、パンくわえて走ってた私もわる…い…?あれ?



「あぁああ!遅刻する!!」


やばい!早くいかなきゃ!



「ごめんね、もっと話してたいけど私遅刻ぎりぎりだからいくね!」


「あ、ちょっと待って」


「?」


「……その制服、氷帝…?」


「え?…そうだけど?」


「ふーん…今週の土曜、氷帝テニスコートに10時に集合」


「っは?」


え?テニスコートが、何って?とかきいている暇もなく、私は適当に返事を返してその場を立ち去った。



「なあ、越前。あの子ボールあたったのに、平気だったのか…?」


「……みたいっす」


「そっか、ならよかったじゃねぇか!」


「っす」


「ってか、何話してたんだ?気になるじゃねーか」



そういって、うりうりと越前の肩にひじをぐりぐりさせる桃城。



「別に…土曜日の練習試合の日に、会おうって」


「っは?」


「約束しただけっす」


「………、おま…っは?一目ぼれしたのか?」


そう聞かれて、越前はふっと笑った。



「……桃先輩、秘密っすよ」



パンを食べながらダッシュする





「(あああああ、この間の青少年!)」


「(っす。きてくれたんすね)」


「(いや…まあ、こいって言われたから…)」


「(とりあえず、話ししたいんすけど、時間あるんすか?)」


「(え…?あ、う、うん?いいよ?)」






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