「ねー」


「ん?」


「何でクラスのみんなに言ったん?」


「何を?」


「……付き合ってること」


いや…別に隠すつもりもなかったけどさ。あんな堂々と言われても恥ずかしいというかなんというか。




「……策」


「策?」


「クラス公認のカップルになってもーたら、あれやん。いくら俺のファンでも花子に手出しできんと思わん?」


…いや、思いません。なんて思っても言葉にしない。……いや、ファンって結構しつこいからさ。クラスに出向いてくるかもしれないね。明日からの私のスクールライフが心配だ。


……でも、それよりも蔵の恋人になれたことのほうが嬉しい。




ジーン…なんて胸にしみってるぐらいやばい感動してる。今一緒に帰ってることも、やばいくらい嬉しいのに。嬉し泣きしそうだ、家帰るまで涙は流さないでおこう。



「……まあ、何かあっても蔵が何とかしてくれるって信じてるから」


「マジか。俺そんな信用されとるんか、花子の愛感じた」


「え、今ので感じたの?……まあ、別にいいけど」



花子は俺のことやばい愛しとるからなー、ほんま困るわー。なんてボケてる蔵を誰かなんとかしてあげてほしい。…でも、そんなところも可愛い。なんて何言ってるんだ私。何か、認めたくないけども、やっぱどんな蔵も好きだ。大好きだ。





「……あ、花子!トンボおるで!」



「え?!」


そういって蔵の指差す方向を見ると同時に、蔵は私の頭をすばやく掴むと、強引にひきよせた。――目の前いっぱいに広がる蔵の顔。心臓に悪すぎる。



…っていうか、私…これ、チュー?チューされてる?








「……っふ、トンボなんて今の時期おるわけないやろ」


「……っく、騙したな」


「騙されるほうが悪いわ」


そういってニヤニヤ笑う蔵に頭突きをくらわして、少し前を歩く。慌てて「待ってや!」なんて追いかけてくる蔵を、今の私が見れるはずがない。


……耳まで、真っ赤なんて。心臓が、どきどきしてるなんて。



不意打ちのキスほど卑怯なものはないと思った。












「……蔵と一緒に帰るの、やだ」


「残念やな。志望校一緒なお前は高校へいってからも俺とおらなあかん運命や」


「……あ」



本当だ。本当に…もしも、同じ高校いけたら蔵とまた一緒なんだ。






「ふっふー好きやで花子!」


「うわあああ!何で抱きつく!」


「好きやからしゃーないやん!もう好きすぎて困るわ!」







――これからどうなるか分からないけど、きっと蔵となら乗り越えていける。そんな気がする。


……クラスも苗字も一緒なのはきっと神様が仕組んだイタズラに違いない。




でも、きっとこうして蔵と一緒にいれる理由は苗字が一緒、って理由からなんだろーな。


じゃなきゃ、ただのクラスメートとかで終わっていた。




……あの、雨の日。蔵が、私の苗字をよんでくれたあの日から、すべては始まった。





何気ないきっかけからだったけど、幸せを掴めた。そのことに、私は感謝したい。







「蔵」


「ん?」


「……仕返し、」



そういって抱きついている蔵にちゅっとしてやると、彼はびっくりしたように目を丸くしてから、次に頬を赤くさせ、口を金魚のようにパクパクして慌てだす。




「お、おま…今の卑怯や!」


「せやから、仕返しいったやん」




――ずっと、ずっと好きやから。離れんでよ、蔵。




好っきやねん。





「(花子、花子!クラス一緒やで!)」


「(嘘、ほんと?!)」


「(こんなんで嘘つかんわ!……高校いっても、同じクラスなんて俺ら本当運命やな。好きやで、花子!)」


「(ちょ、人前!人前で抱きつくな、馬鹿!)」








fin.


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