泣き虫と強がり
「花子ー?どこや、花子ー…!」
探し回って10分。……あの馬鹿、一体どこに隠れよんねん。そう思っていたら、木の後ろに見慣れた黄色いジャージがはみ出していた。
「……花子、」
「く…蔵、な、何できたん!」
「……何でってなあ、そりゃあお前が心配やからに決まっとるやろ。」
いっこうに顔を見せようとはしない花子。…きっと、泣いたのだろう。顔を伏せてはいるが、目が赤らんでいるのが見えた。…クマはあるし、目はパンパンにはれあがっとるし…すっごい顔。なんて笑ってやったら花子はまたいつもみたいに怒ってくれるだろうか?
今の俺にはどうしたらコイツが元気になってくれるか分からない。…元気づけて、やりたいんに。
「……すまんな、勝てへんかった。」
「……ううん、気にしてない。蔵、試合に勝ってたやんか。しかもあの天才不二君とかに。」
「あぁ…あれは、」
あれは…まあ、運みたいなもんもあったからなあ。不二君…彼はほんま怖いと思った。試合中に成長するなんて、ポケ●ンが戦いの最中に進化するぐらいありえんことやで。
「蔵、かっこよかった。」
「――…」
「なーんちゃって。まあみんなかっこよかったけどね。」
そういうと、花子は目をゴシゴシこすってから「じゃあ帰ろっか。みんなのとこに。」と笑った。…なんでそんなふうに無理をして笑うのだろうか。今ここが会場じゃなかったら、きっと理性がきかなかった。抱きしめたい。抱きしめたくて、仕方がない。
「……蔵?」
「もうちょっと…もうちょっと、話さへんか?」
「え?」
「……もうちょっとで、ええから。」
ほんの1分1秒でもいい。……弱々しいお前を、独占させてくれへんか?
なんていえるわけもなく、俺は引き止めることしかできなかった。
「(蔵リン…花子ちゃんと合流できたかしら…。心配やわあ。)」