「おぉー…。」


「あれ?花子ちゃんやないの〜!」


そういって、奥のコートでユウジとラリーをしていた小春が私の存在に気付きこっちに駆け寄ってくる。あ…ユウジ放置プレイだけどいいのかな?とか思ったのも束の間、「小春ぅ〜!何でそんな女のところいくねん!」なんてユウジが怒り出した。……うわぁ、後がめんどくさい。



「んもう、ユウ君だまっとって!……花子ちゃん、マネの仕事しにきたんよね?」


「え?あ、う、うん…。」


練習試合の翌日だというのに部員は熱心に練習に励んでいる。…なんていうか、感動した。昨日あんだけ動いたのにまだ頑張るのか…。



「花子ちゃんもよぉ頑張ってくれるわぁ。マネージャーやなくっても、あたしらはあんたのことマネージャーやと思ってんで!」


「あはは、ありがとー。何か小春にそういってもらえると嬉しいなあ。」


「っはは…やっぱ花子ちゃんの笑顔は癒しやわあ。」



そういって、小春が私の髪の毛をわしゃわしゃとすると怒ったユウジが全速力でかけよってきた。



「おんどりゃあ!われ、俺の小春になにさらしとんのやあああ!」


誰がいつあんたのもんになってん。ユウ君うざい。」



「こ…小春?!」


ショックをうけたユウジは、ふらふらとどこかへ行ってしまった。…え、なにいま目の前に繰り広げられた光景は。コント?2人がそろえばどんな会話も漫才に聞こえるのは不思議だ。



……それにしても、小春に頭をなでられたとき――蔵に頭をわしゃわしゃされたときのことを思い出した。なんか…蔵が恋しいっていうか。

って何言ってるんだ私!乙女モードかって…!



「(ぎゃーぎゃー!)」


「……ど、どないしたん、花子ちゃん。なんや…1人で妄想?」


「え?!そ、そんなことないよ!!」


さっきも謙也に言われたばっかなんに、私そんな態度にでてた…?!もう蔵について考えるのはやめよう。これ以上自分の醜態を晒すのは恥ずかしすぎる。本人に見られなかっただけまだ救いだと思おう。





「……そういえば、全国大会まで1週間きったね。」


「あら。覚えとってくれたんや、さっすがやわ〜。」


「えへへ。」


全国大会…これで、3年生は引退となる。できれば、優勝をしてほしい。……他校から見たらふざけているように見られるかもしれないけど、彼らは彼らなりに一生懸命にやってきたんだ。並半端の気持ちでテニスをやってきた、というわけではない。

その証拠に、彼らは大会を数々と勝ち続けてきた。



――もちろん、日吉のいる氷帝だって勝ってほしいとは思うが。




なんだか色々と複雑だ…氷帝ってそういえば青春学園?ってところとだったっけなあ。もし氷帝が勝ちあがれば四天宝寺とあたる可能性だってある、っていうことか。



「……小春、」


「ん?どないしたのよ。」


「……優勝、できるかな?」


そういうと、小春は少しの間を置いて――。



「大丈夫よ、花子ちゃんみたいな勝利の女神様がおれんから。女神様、あたしらに微笑んでや!」


そういって笑う小春。それにつられて私も思わず笑ってしまった。だけど、胸の中にあるもやもやだけが晴れることはなかった。



迫り来る全国大会




「(蔵も、同じ気持ちなんかなあ。)」




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