幼馴染と再会
「花子先輩!」
そういって向こうからゆれる金髪のキノコヘアー。……ぎゃあぁぁああ!日吉だ、日吉いいい!
「日吉!お久しぶり!っていうか身長のびたね…ひゃー。」
「先輩もなんだか雰囲気が変わりましたね。…だいぶ会ってないからでしょうか。」
待ちに待った練習試合の日。日吉の電話がかかってきてからほんの数日しかたっていない。まあ、そのほんの数日なのだが練習がいつもより過酷になって、それをベンチで眺めている私は『凄いなあ…。』っとあっけにとられていた。
四天宝寺が強いということはなんとなく知っていたが、なんていうか…部員たちのキャラがお笑い系だから本当に強いのかと疑いたくなるときもある。
…でもやっぱり、みんな強いんだな、と改めて感じた。まあ、伊達にマネージャー…もどきをしているだけあるっていうことだ。っていうかオサムちゃんとかテニス部の部員も私みたいなのを受け入れるっていうのが凄い。…マネージャーでもないのに、いてもいいのだろうか。とかたまに思っちゃうけど、蔵に『お前はマネージャーみたいなもんやから。』といわれたことがあるから何だかんだで居座ってしまう。
マネージャーじゃなくても、マネージャーのように扱ってくれる部員達が好きだ。私の癒しの空間でもあったりする。
「……っていうか、先輩は練習試合に来ても大丈夫なんですか?」
「あーうん。私マネージャーもどきだから。」
「……もどき?まあ、いても大丈夫なら構わないのですが。」
「日吉は相変わらず元気そうだよね。」
「そりゃあ元気ですよ。……そういえば、先輩、その足どうしたんですか?」
まだ完治してない私の足を見て、日吉が眉間に皺をよせた。…あれから少しはれがひいたとはいえ、やっぱり触ると痛いし歩く時も不便に感じるときがある。……日吉にどう説明しようかな。
女子にバットで殴られて捻挫しました、あはは。…なんて馬鹿正直に言ってしまったら日吉がどんな恐ろしい顔をするのだろうか。想像したら怖い。だからといって嘘をつくのも何だか気が重い。
「いや…まあ、うーん。」
「誤魔化さないで下さい。」
「いや、その…気にしないでいいよ!あ、そろそろ集合がかかるだろうし日吉も氷帝のところに戻ったほうがいいんじゃないの?」
「……はぁ。言いたくないのなら、無理強いはしません。……ですが、後で絶対に教えてくださいね。」
そういって、日吉が踵を返そうとしたときだった――。
「俺が怪我させたんや。」
気配にまったく気付かなかった。蔵が私の背後からにゅっと現れると、日吉のまん前に立った。
「――っ!白石さん…!」
「……こいつ、捻挫しとんねん。ついこの間…俺の不注意のせいでこんな足にさせてもうた。」
……何で、蔵は自分を責め立てるような言葉をつかうのだろうか。
日吉は蔵の胸倉をつかむ。それを間近で見ている私は、あまりにも緊迫した空気に一歩も動けずにいた。
ことの原因は自分じゃないか。自分が日吉を止めなくて、どうする。そうは思っても、体が動かない。
「……あんたっていう人がいて、どうしてこんな不注意を招いた。先輩に何をした。」
「……。」
「答えろ。」
違う、蔵は何もしていない。していないといいたいのに、今の日吉は何を言っても聞いてくれないような目つきをしている。――怒りに満ち溢れているような、そんな目だ。
コツンッ。
「っ…!何するんですか!」
「日吉。何やってんだ、てめーは。さっさと戻れ。」
「………、跡部部長。」
跡部、とよばれた人物は日吉の頭をこつんと殴ると、日吉は蔵の胸倉から手を離した。それによって一瞬ふらついた蔵の肩を私が支える。
「……蔵、大丈夫?」
「………あぁ。大丈夫や。」
「何、するんですか、跡部部長…。俺は――。」
「日吉。何があったかはしらねーが、今日は何をしに来た。喧嘩をしにきたわけじゃねーだろ、あーん?」
その言葉に日吉は反論ができなかったのか、「……っち」と舌打ちをしてそのまま氷帝のほうへと戻っていってしまった。……とりあえず、一難去ったか。ほっと息をつくと、跡部がこっちを見た。
「……すまねえな、白石。日吉の無礼を許してやってくれねーか。」
「いや…本来なら謝るんは俺のほうやから。気にせんでええで。」
「……そうか。それならいいが。」
そういうと、跡部という人も氷帝のところへ戻っていく。……日吉。
「(後で日吉と話そう。誤解を解かなきゃ。)」