「――蔵、こないなところまでありがと。」


「…ん。こんなん当たり前のことやから、気にせんでえぇ。っちゅーか、ほんまに今日はすまんかった…。」


「いいって。もう何回も謝らんでよ。」


蔵は何かあるごとに会話の途中で謝ったりする。――それほど、蔵にとってはショックな出来事だったんだろうなあ。心配…かけさせてしまっているのがなんだか申し訳なくなってくる。


〜〜♪

ふと、途中で鳴り出した着メロ。


「あ…電話や。」


「俺、あっちいっとったほうがええか?」


「ん、別に大丈夫だよ。」


携帯のディスプレイを見ると、『日吉若』という文字が見えた。…日吉?あれ、何の用事だろ。そう思い通話ボタンをおすと、電話越しにぎゃーぎゃーとうるさい声が聞こえてきた。……何これカオス。


『花子先輩、すみません、うるさくて。』


「……いや、別にいいけども。何、どうしたの?」


『練習試合がそろそろだから電話してみたんです。』


「………練習試合?


その単語を呟くとともに瞬時に蔵のほうをぱっと見ると、蔵は空を見上げて「星が綺麗やなあ。」なんて呟いていた。……え?そんな話し一切うかがってないんだけど?


「え?練習試合とか嘘でしょ。エイプリルフールでしょ。」


『いえ、エイプリルフールじゃないです。え…まさか聞かされてないとか…?』


………うん。まさかの聞かされてなかったパターンなんだけど。いや、もともとマネージャーじゃないし仕方ないけどさ…どういうことなんだ白石の蔵ノ介さん。」


「あー……あ?え?練習試合?はっはー、言うたらサプライズや!ドッキリや!花子ひっかかったな、全くアホやなー。」


「………。」


ダメだ、蔵の野郎完全に練習試合の日にち忘れてたな。電話の向こうでは日吉が『はぁっ。』とため息をつく声が聞こえた。どうやら向こうも呆れているらしい。いや、ごめん、日吉。なんていうか…うん、ごめん。全然知らなかった。



『……っで、花子先輩は練習試合にくるんですよね?』


「行くよ。日吉に会いたいしね。」


『………、あなたは何を言ってるんですか…まったくもうっ。』


電話きりますからね、そう続けた日吉は本当に電話を切りやがった。あの野郎…相変わらずツンツンしやがって。たまにはデレを見せろ、デレを!

携帯をしまうと、蔵が不思議そうな顔をしてこっちを見た。



「なあ、日吉君とどないな関係なん?」


「え?あれ?言ってなかったっけ?」


「ん?」


「幼馴染だよ。」


「………っは?」


きょとん、とした蔵の顔が今世紀最大に面白くて、私は家の前だというにも関わらず思い切りふきだしてしまったのだった。後からお母さんにうるさかっただの文句を言われたのは仕方あるまい。




日吉から電話です





「(おーい、ひよっこー。幼馴染との電話どうだったー?)」


「(……向日さんたちが背後でぎゃーすかぴーすか騒いでたんでとても不愉快でしたね。)」


「(仕方ねーだろ!だってあの日吉が女と電話なんて前代未聞すぎるだろ…なあ侑士!)」


「(確かに日吉が女と電話っちゅーのは珍しいな。幻のキノコや。)」


「(誰がキノコですか。先輩方本当土に埋まってくれればいいのに…。)」





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