何だかんだで先輩思い
――あれから時間がたったのだが、謙也が帰ってくる様子はない。…えぇ、私まさかの放置プレイ?帰ってもいいん?
マジで蔵呼びにいったのかなあ…。
蔵はきてくれるだろうか。…ほんのかすかな希望を持ってしまう自分はダメだな、現実見ないと。
「はぁ……。」
「あ、幸せ逃げた。」
「え?」
くるっと後ろを振り返れば、「アホ面。」といって財前がデコピンをしてきた。いた…!手加減なしかよ……!
「痛っ!何すんの?!」
「アホ面しながらため息ついとるからしゃーなしデコピンしてやったんすわ。感謝しはってください。」
そういうと、財前は私の隣に座る。……何この子憎たらしい後輩!だけど許せるのは何でだろ!
「……はぁー。」
「…何でまたため息しはるんですか。」
「いや、財前かよー的な?」
「何で俺に聞きはるんですか。知らんわ、アホやろ。」
「何だと財前ちきしょー…!」
そのピアスひきちぎってやろか!そう思いながら財前のつけてるピアスをひっぱってやると、「いた!何しはんねん!」と本気で抵抗された。……やっぱピアスってひっぱると痛いのかあ…教訓になった。
「あぁ、花子さんの今のやつで絶対ピアスの穴でかくなったわー…。」
「よかったね、その耳にハンガーひっかけたろか。」
「……遠慮させてもらいますわ。」
そういって財前がしっしと私を手であしらう。…おま、仮にもこっちは先輩だぞ。何だその態度。そう思った瞬間に、キーンコーンカーンコーンと予鈴のチャイムが鳴った。
「……あ、チャイム鳴った。いかなきゃ、」
そういって立ち上がろうとすると、財前が私の腕を掴んだ。
「……さぼればええやん。」
「……いや、さぼったら後々めんどくさいやん。」
「そりゃそーやろーけど…今の花子さんをクラスにかえしたない。」
「……え?」
そういって財前の顔を見ると、財前は私の顔を真剣な表情で見ていた。……何だ、財前。何か私泣きたくなってきたんだけど。
「………行くっちゅーんなら意地でも止めます。」
「……何でよ。」
「やって、先輩泣きそうですもん。今日の朝からずっとそう。……何あったか知らんけど、そんな辛そうな顔しはる先輩、俺の知っとる花子さんやないから…。」
せやから、いかんといて。……そういった財前に負けて、私は重い腰をまた再度おろした。…私も後輩に弱くなったもんだ。
財前の言っていることはむちゃくちゃだし矛盾している。けど、財前が私を心配してくれているのが伝わってきた。
「(花子…クラスに帰ってきとらんなあ。どないしよ…俺が中庭で待っとれ言ったせいや、怒っとるよな、絶対……。)」