加速
しばらくの沈黙の後、目をぱちくりさせて、蔵は左、右を確認。そして私のもとへよると、
「お前…何のドッキリやねん。ほんまどきってするわ。」
と微笑んだ。――胸がズキンと痛む。本気の告白だった。
好きだなんて…冗談でも言えるわけないじゃないか。まして相手は異性。これが…冗談に聞こえるの?蔵には。
「……もう、いいよ。」
「……っ、花子…?」
「もう、いい。………冗談で、好きなんていえるわけない。」
そう吐き捨てると私はその場を逃げ出した。後ろから蔵が私を呼び止める声が聞こえた気がしたが、私は遠く遠くへと走り続けた。……蔵が追って来る気配はない。しばらくして、私は歩き始める。
追いかけてくれるだなんて、そんな漫画チックなこと…あるわけないか。あんなちょっとのことで怒ってしまった自分が恥ずかしい。でも、好きっていったのを冗談と思われたのが悲しかった。……私は、友達の対象でしかないの?
分からない。蔵が、分からない。
私は好きで好きでしょうがないのに…何だか悔しい。
白石と同じ苗字ってことだけでうかれて…あぁ、馬鹿みたいだな、自分。
「(……あ、家だ…。)」
気がつけば、私は家にたどり着いていた。――後ろを振り返る。
やはり蔵は、追いかけてはくれなかった。
「(………花子…。)」