「べ、別にいいけど…。」


いや、よくないけど。目が真っ赤だしチームメイトが心配してるかもしれないし、あああ…でも蔵に呼び止められてるし…どうすりゃいいんだ。


「なら、あっち座ろうや。」


そんな私の心境を知ってか知らずか、蔵は一番近くにあるベンチに腰かけた。――仕方ないよね、いいっていったの自分だし。

私は目をゴシゴシこすってから、気合をいれて蔵の横に座った。…泣かないぞ、泣いたらダメだ。



「……あんな、ほんまは俺も悔しいんや。」


「………。」


「……こんなごっつええ仲間がいっぱいおれんから…優勝やって、夢やないって思った。げんに、手を伸ばせば届くところに優勝はあったしな。」


「………うん。」


「せやけど…やっぱ全国大会は予想以上やな。悔しいけど、青学はほんまに強かった。氷帝に勝ったっちゅーのも分かる気がする。」


「………。」


「まあ、終わったもんはしゃーない。勝つこと以上に大切なもんを、俺達は学んできた。…これで3年生は引退になるけど、時期部長の財前がきっと部を束ねてくれる。」


「………、」


「あんなヤンキーに任せても大丈夫かって言いたいくらいなんやけど…ああ見えてアイツは責任感が強い男やからなあ。きっと、四天はもっと強いチームになるで。」


そういってから、蔵は「財前に優勝頼むしかないなあ。」といって私の頭をくしゃくしゃにした。




「……蔵…」


「ん?」


「ほんまに蔵が部長でよかった。今までありがとね。」


「……そんな改まるなや。俺こそ…お前がおってくれてほんまによかったって、思っとんねんから。」



――そういってふわっと微笑む蔵に、胸が苦しくなった。



「…泣くなや。」


「な、泣いてなんか…!」



「……高校いったら、そん時は絶対優勝したる。もう…お前に涙流させんから。」



そういうと――蔵は私の頬を両手で包み、そっと額にキスを落とした。





負けない約束





「(え……ええええええええ?!ひ、額にぷにゅって!ぷにゅって、やわらかい感触が…!)」







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