馬鹿でも風邪は引く
「へっくしょん!ちきしょー。」
「どうしたー白石変態のほう。お前でも風邪ひくんか?」
「どういう意味やユウジ。おま…あれや、部活のときおぼえ…へっくしょん!ぶえー…ちきしょー…。」
……さっきから蔵がおかしい。いや、おかしいのは頭とかそういうのじゃない。顔が赤いというか、くしゃみのしすぎっていうか…。極度に寒がってるし、さっきから「花子!おかゆ!おかゆ食べたい!」なんて言っている。
蔵に古典の教科書をかりにきたユウジもはぁーっと呆れたようにため息をついて、「白石、お前それ風邪とちゃうん?」なんてあやしむような目をした。
「風邪?……風邪?!なんやと、この俺が風邪やと?!」
「……何でこいつ興奮しとんねん。」
「いや、これはいつものことやから気にせんでええよ。」
「風邪ひいてもうたぁぁぁああぁぁぁああ!花子、チューしよう!チューしたらなおる!」
「なおらんわああああ!」
私はすぐ手元においてあった自分のノートで思い切り蔵の頭をはたいた。「あだっ!」という声とともに、いい音がした。――それを見て、ユウジが笑っている。
「ユウジ笑うなやああ!」
「いや、白石変態は風邪ひいても変態なんやなーって。花子、お前も色々と苦労しとんな…あまりにひどかったらこっちのクラスきてもええで。っつっても、俺と小春の間邪魔したら切腹やからな?」
「いや、興味ないよ。あんたと小春がどんな関係かしらんけど、さらさら興味ないよ。あ、そろそろチャイムなるしユウジ帰ったら?」
「おー…あ、ほんまや。じゃあ、お大事に。」
そういうと、ユウジはささっと廊下をかけていった。……それにしても、はぁ。蔵が風邪を引くとは…。
「……ごめん。」
「……っは?え、何で急に謝んねん。」
「昨日私が相合傘させたからや…。」
相合傘なんてさせんだら、蔵も風邪ひくことなかったやろうなあ…。昨日は『馬鹿は風邪引かん』とかいってたくせに、風邪をひいたのはどこの誰だよ。目の前のお前だよ、ばか。
「あー、気にすんなや。」
ガシガシッ!
蔵が笑いながら私の髪の毛をぐしゃぐしゃにしてきた。……髪の毛、セットするの時間かかってるのに。
「俺はこのとおり元気や。」
「………。」
「せやから、お前がそんな顔する必要ないやろ?」
ニコッ
そう笑った蔵の笑顔は不意打ちだった。――え、ドキッてした?気のせい。気のせいだろ、私。そうだろ、私。
「(とりあえず保健室いこう。)」
「(え、せやから俺元気やって言うてるやん。)」
「(あかーん!熱なめんな!)」
「(……お前、おかんみたい。)」