私と滝君とせーちゃんと真田という人でファミレスに入る。気前のいい感じの女の店員さんが「いらっしゃいませ〜」とやってきて席を案内してくれた。――なんだかお客さんや店員さんの視線が痛い。

っていうのは、絶対に絶対なのだがせーちゃんのせいである。


「(…イケメンは目立つからなあ。)」

私と滝君、せーちゃんと真田という人の組み合わせで向かいあわせるように座った。

「さて…まあ話しをする前に、みんな何か頼みなよ。」

「じゃあ私オレンジジュース。」

「俺はコーヒーで。」

「うむ…俺もコーヒーを頼む。」

「じゃあ俺はアップルジュースにしよっかな。花子、半分こずつしようよ。」

「………えっ、まさかの半分こ?いや、でもこんなおおっぴらな場所でやるのやめようよ、めっちゃくっちゃ恥ずかしいから。」

「いいじゃん、そんなの小さい頃からの仲だろ?」


そういって、せーちゃんはクスッと笑った。


ちょっと昔の話しをしようか





ガラッ。

どうやら、お店にお客さんが入ってきたようだ。それはいいが、何故だか女性の客の悲鳴や雄たけびのようなものが聞こえる。

「(え、何だろう…?)」

おそるおそる振り返ると、そこにいたのはよく見知った顔ぶれども。

「――……っ」

「どうしたの、花子?顔色が急に悪くなったようだけど。」

「え、な、なんでもないよ!あ、そういえばこれ美味しそうだね!」

何で跡部たちがファミレスきてんの?!思わぬ誤算に冷や汗がでる。咄嗟にせーちゃんの視線をそらすためメニューを指差した。が、生ビールだった。


「え…?ビール……?」

「あ、ち、ちが!ビールじゃなくて、こっち指さそうとしたんだって!」

そういって隣のデザートのページにあるバニラのアイスクリームを指さす。


「……アイス、って…でもさっき食べてなかった?しかもバニラ。」

ごもっともでございます。でもそこを指摘されると返しに困る…!あぁ、泣きたい。跡部たち、後でボコボコにする。絶対に。


「い、いや…まだ食べたいっていうか…」

「じゃあ頼めば?お金なら気にしなくていいから。」

「え、ちが、そうじゃなくて――!」

いや、もういらない!食べたからいらない!



「ふふ…じゃあ欲しくなったら頼めばいいよ。気にしなくていいからね。」

「あ…はい。すみません。」

「そんなかしこまらなくていいのに。」



――とりあえず一難去ったようだ。ちらっと変装した跡部たちのほうを見ると、やつらはこっちよりちょっと離れたところに座ったようだ。…だが、何をしてるかは丸見えの位置。


「(……変装はバレバレだし、丸見えだし…最悪だろ、あいつら。)」

これは新手のいじめか。いじめなのか。

あぁ――…頭、痛くなってきた。




「(ねぇ、花子。)」

「(え、何?)」

「(……もしかしなくても、あれ、跡部たちだよね。)」

「(……ごもっともでございます。)」

――滝君も気付くほどの変装力のなさ。自分たち、サングラスつけて髪型変えればばれないって思ってるみたいだけど、全然バレてるからああああ!

何かもう、むしろ見てるこっちが恥ずかしいから!

女子の視線くぎづけだから!






「(……泣きたくなってきた。)」







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