「――…で、その格好は一体何の真似ですか」
すたすたと歩いていく木手さんについていくのでやっとな私は、その言葉に思わず言葉をつまらせる。…うっ。やっぱり、怒られるだろうか?部員の気を滅入らせるとか、そんな格好するぐらいなら帰れだとか。いや言われても仕方ないんだけど。
「……いや、あの、すみません」
「何であなたが謝るんです?」
「何か、申し訳ないなーと思って…」
「あぁ…誤解をさせてしまったならすみません。怒っているとか、そういうわけじゃないんですよ」
そういって木手さんはくいっと眼鏡をあげた。…な、なんだかんだで木手さんもいい人じゃね?思ってたより全然話し通じるんじゃね?
「……あの、」
「何です?」
「木手さんって、見かけは怖いけど中身は優しいんですね」
そういうと、木手さんは一瞬言葉をつまらせてから、「つまらないことを言ってないで行きますよ」なんて先を歩いていってしまう。後ろからだからあまり顔はうかがえないけど、照れてる…?
「照れました?」
「照れてません」
「いや、照れましたよね」
「だから、照れてないと言ったでしょう」
「いや、だから照れt「ゴーヤ食わしますよ?」……ごめんなさい」
何でゴーヤ…?よく分からないけど、何かあんまり問い詰めたら木手さんがきれるんじゃないかって怖くなってきたからやめといた。でもやっぱり木手さんは照れてたんだと思う。耳赤いし。
「――ほら、つきましたよ」
「あ、本当だ」
「…あまり迂闊に単独行動はやめといたほうがいいですよ。君はちょっと抜けてるみたいだから」
そう忠告すると、木手さんはコートのほうへかえっていってしまった。…あ、お礼ちゃんと言ってないのに。っていうか、抜けてるってどういうこった。この短い会話で私は馬鹿にされたのか。まあこの格好だもんな、仕方ないか…。
「あ!花子、お前おっせーぞ!」
「道に迷ってたから仕方ないじゃんかー」
汗だらだらの岳人が、私に向かってぶーぶー言ってくるが無視。とりあえずカルピスを渡しとけば、「さんきゅ!」なんて喜んでた。……機嫌なおるの早いなあ。
ジリジリと肌をやく日差しに、何だかため息がでた。――この暑さでよくあんなに動けるよね。こんな中テニスしたら絶対熱中症になるよ…。
「(よし、じゃあ私は審判でもしよっかな)」
少しでも部員達の負担減らしてあげなきゃね。どんだけ心優しいマネージャーなんだ!もっといたわってくれてもいいのにね。