「花子、俺ファンタがいいー」
「スポーツマンは炭酸禁止ですー」
「何だそりゃ。じゃあ、カルピス!」
「はいはい」
岳人にぱしられて、この有様である。…なんでメイドがジュース買いにいかなきゃならんのだ。
あの後、日吉に『どう?可愛い?』っていってみたら静かに首を横にふりやがった。あんな憎たらしい日吉は初めてだ。長太郎なんて顔ひきつってたからね。『す…素敵ですね!』なんていってたけど、長太郎さ。あんたさ、笑ってたよね。私知ってるんだからね、あんたが私を見て笑ってたこと。
「……っていうか、自販機どこ?」
あれー?ここ、どこだろ。
とりあえず校内へ入ったはいいが、全然どこいけばいいかわかんない。…いや、困った。ガチで困った。
「…………」
「(っひ?!何だこの視線――?!)」
突き刺さるような視線を感じて振り向くと――。…そこには縦にでかい、大男がいた。…真ん中の髪の毛何で白いんだ。
よくわかんないけど、とりあえず怖い。怖いぞ、この状況……!
「あ、あの……」
意をけっして話しかけてみると、ギロリと睨まれた。っひ!超怖い!
「じ、自販機って、どこ…ですか?」
「…………ついて来い」
「あ、はい……」
初めて声きいた…。何だかよくわからない感動をしながらも、必死に背中を追いかける。身長がでかいから足幅も広い。そのせいで、私はほとんど早歩きみたいになっている。
「…………」
「(あ、れ……?)」
ちらっとこちらを振り返ってから、私を見てスピードをゆるめてくれた。……この人、見た目は超怖いけど中身はとても優しい人なのかもしれない。
そう思ったころには自販機の場所にたどり着いていて、私が「ありがとうございます!」なんてお礼をいったら彼はふっと笑ってくれた。
「あ、あの!」
「…………」
「名前は?」
そう聞くと、立ち止まって彼は「…………知念」とだけ呟いた。
知念、さんか。何か心が広そうな人だなあ。うちの氷帝でいえば、樺地てきな存在かも。
「(…比嘉っていい人ばっかな気がしてきた)」
この練習試合もなかなか捨てたもんじゃない。そういう気がしてきた。