「うひー…暑い」
部員達のドリンクを作り終えたはいいが、汗だらだらだ。…っていうことは、外で部活してる彼らはもっと暑いんだろうなあ。
日吉なんてさっき、日焼け止めを念入りにぬってたっけ。理由をきいたら、日焼けした後お風呂に入ったときのヒリヒリ感が嫌だ、なんて可愛らしくいうもんだから抱きついてやろうとしたらパーでビンタされた。(本人はちょっと加減したらしいが、私には容赦がないように感じた。本当に手加減してくれたのだろうか?)
「よし、運ぼう!」
そう思い、とりあえずドリンクの入ったカゴを運ぼうとするのはいいが、いっきにたくさん運ぼうとすると重くて持ち上がらない。
……くそ、今の自分の乙女っぽさを氷帝のやつらに見せつけてやりたい。
なんて思いながらも何度も持ち上げようとするのだがやっぱり持ち上がらない。……ちょっとずつ持って行くしかないかな。
そう判断した時、部室が開く音がして中へ入ってきたのは――…髪の毛が茶髪の人だった。
「(うわ、髪の毛もっさりの人だ)」
「ん?やー、何してるっさー?」
「あー…これからドリンク運ぶところなんで」
「それならわんも手伝うっさ」
「……え?」
「いなぐー(女の子)1人じゃ可哀想だからな。ほら、貸せよ」
そういうと、髪の毛もっさりの人は軽々とドリンクの入ったカゴを持ち上げた。……あ、なんだか悔しい。
男女っていう差があるから当たり前だけど、こうも軽々持ち上げられると自分が情けなく思える。
「……ごめん、ありがと」
「ははは、そんな気んするくとぅねーらん!わんがやりたいからやっただけさー!」
「はぁ」
ニコニコと笑ってくれるもっさり髪の男の子…。あなたの笑顔は太陽ですか。沖縄に光る太陽、ってまさにこの人のことだろ。……氷帝の部員達もこんな可愛ければなあ。いや、やつらがみんなニコニコだったらそれはそれで気持ち悪いかも。
日吉がニコニコする姿なんて想像できない…!ニヤニヤする姿なら想像できるけど。
「あ!やーの名前は何て言うんさー?」
「田中花子だけど…」
「花子、な!ゆたさん(いい)名前つけてもらったなー」
「………?あ、うん」
沖縄弁…っていうか、うちなーぐちって私よくわかんないんだよなあ…。とりあえず返事返して見たけど、翻訳してくれる人は誰かいないのだろうか。
……少し反応に困っていると、今度はさっきポッキーでもめていた2人のうちのもう片方の金髪が部室をあけてやってきた。
「おーい、裕次郎。試合もーすぐだろー」
「おー、凛!でも困ってるいなぐー放っておけなくて」
「はぁ?…何だっていいからさっさと行けよ。永四郎がかんかんさー」
「っげ!……うぅ、永四郎は本当短気さー…」
そういうと、髪の毛もっさりの男の子は金髪の少年にドリンクの入ったカゴを持たせると、「じゃあ凛に任せた!」なんて言って駆け出した。
「な…何だこれ?!重たっ!」
「あっはっは!あ!そーいえば、わんの名前教えてなかったっさー!」
そういって、茶髪の人はクルリと振り返ると、笑顔で「甲斐裕次郎!ゆたしく(よろしく)!」と言ってそのまま出て行ってしまった。呆気にとられていると、隣から「はぁ…」なんてため息をもらす声が。
「……あの、代わりますよ」
「え?」
「重たいなら、持ちますから」
なんかこの金髪の人…細いからポキッて腕折れちゃうんじゃないかって心配になる。
「あー、大丈夫っさー。これぐらいわんに任せろ」
「え…でも、」
「いなぐーは座っときなって」
そういうと、「どこ持ってけばいい?」なんて金髪の人が聞いてきたから「ベンチまで…」と遠慮がちにいうと、「はいはい」とかいって出て行ってしまった。