(日吉視点.)
「大好き。」
そういわれて、思わずあわてる自分がいた。
「な…何を言っているんですか、先輩は!まったく…!」
――先輩の反応がない。ちらっと先輩の姿を見ると、先輩はだらんと伸びた状態で寝ていた。……そこで眠りに入るのか。
まったく、意味が分からない。多分、『大好き。』っていう言葉も寝ぼけ半分だったのだろう。……寝ぼけているにしても、そういうことを軽々しくいうあたりが先輩らしいというかなんというか…。
「……はぁ。もう、布団ぐらいちゃんとかぶって寝てくださいよ…。」
柄にもないとは分かっているが、さすがに次の日に大切なマネージャーが風邪をひかれても困るので先輩を起こさないように布団をかけてあげた。
……さて、俺は一体どこで寝ようか。
今から自分の部屋まで戻るのもめんどくさい。だからといって、部屋に帰らなかったら帰らなかったで向日さんに詮索されるのもめんどくさい。
「………はぁ。」
向日さんってそういえば寝相がめちゃくちゃ悪かったな…。それならまだ花子先輩の部屋で寝るほうが救いようがあるのではないか。夜中どこにいたかなんて適当に理由をつくっとけばいいだろう。
向日さんは忍足さんや跡部部長のように勘が鋭いわけではないし…なんとかいけそうだ。
あぁ、そうしとこう。
「(じゃあ俺も寝るとするか…。)」
さすがに先輩と同じベッドで寝るのも気がひけたので、ベッドから腰をおろして床に座った。――ベッドがいい感じに背中にフィットする。横になって寝るのがベストなのだろうが、床で寝るぐらいなら座って寝よう。
「うぎゃああああああああああ!」
「っ?!」
「………いもむし…。」
………え?いもむし…?急に先輩が発狂したかと思ったら、どうやら寝言だったらしい。…なんだ、いもむしって。
どんな夢をみたらそんなでかい叫び声があがるんだ。
「(……やっぱり向日さんの部屋で寝るのがベストなのかもしれない。)」
まあ、今夜はここで寝よう。今夜だけだが。
END.