(日吉視点.)
別に花子先輩に誘われたから、部屋にいくわけではない。断じて俺はあの人に興味はないし、むしろ関係なんてもちたくない。
……だが、何故俺は足をあの人の部屋に向かわせているのだろうか。気持ちと行動が矛盾している。
自分でもよく分からない。
……嫌い、ではない。なんというか…放っておけない。それがしっくりくる。
普段はゴルァとか殴っていい?とか言うけど、あの人は本当はそんな強い人なんかではないと思った。
――それはあの、立海の幸村さんの言葉を聞いてからだ。
「(花子先輩が…泣く、ねぇ。)」
想像ができない。……が、あの幸村さんが嘘をつくわけではないだろう。
今まではただの変態だと思っていたが、それをきいたら少し…ほんの少しだけだが、印象が変わった。
「(まあ、ウザイにはかわりないが。)」
あの変態癖はどうしたらなおるのだろうか。……なおそうとしない根性も、凄いと逆に尊敬したい。
「それにしても…部屋、遠いなあ。」
…いっそのこと、このまま自分の部屋に戻ってしまおうか。いや、向日さんが俺のベッドを大の字で占領して寝ていた記憶がある。
……部屋に帰るごろには、俺の寝る場所は向日さんに完全にとられているだろう。寝る場所…床しかないのか。
ホテルに来て床…。いっそのこと、花子先輩の部屋で寝かせてもらおうか。
いや、誤りが起こりそうだ。やはり、やめておこう。
「(よし、ついた。)」
部屋についた。深呼吸をしてから、コンコンっとドアをノックした。
ガチャッ。
「日吉ィイイイイ!婚姻届書きにきたんだね!」
「……俺、帰ってもいいですか。」
「嘘!うっそぴょーん!」
そういって、花子先輩があわてたように「ささ!部屋入って!」だなんてあたふたしていうから、思わず笑ってしまいそうになる衝動をこらえた。
………なんだかんだで、花子先輩に可愛いところはある。
まあ、ごくまれにだが。