キノコが可愛すぎる件について
――せーちゃんとの一件から数日がたった。せーちゃんは一体何を氷帝の部員に言ったのだろうか。気になって跡部に聞いてみたけど、「黙れはげ。」っていわれた。
他の部員もこぞって口を開こうとしない。…せーちゃん、何言ったんだろう。
いや、本当怖いわ。マジで私の幼馴染やばいわ、今度から何かされたらせーちゃんにちくってやろう。
『…………!………す、付き合ってください!』
「?」
部活へ行く途中、女生徒の声が聞こえてきた。っわー、告白かあ。青春だねえ。のん気なことを考えながら、物陰からこそりとのぞいてみる。
……って、相手が日吉…だと?!
嘘だろ。目をゴシゴシこすってみるが、やはりそこにいるのは日吉だった。相手の女生徒は茶髪で髪の毛をくるくる巻いた感じで清楚な感じの子だった。……何あの子。超いい子そう。私とは絶対性格とか正反対だ…いかにも可愛いオーラでてるもん。
勝ち目がなさすぎて泣けてきた。
『……悪い。付き合うとか出来ない。』
『……そ、っか…。そう、だよね……。』
遠くから見てるからあまりよく分からないのだが、どうやら泣きだしてしまったらしい。一方日吉はというと、それを見て「はぁ…。」とめんどくさそうにしている。
『……もしかして、好きな人…とか、いる…の……?』
『……さぁな。』
『……それって、あの……マネージャーさん…とか…?』
うわあ。自分の名前だされるとなんだか嫌になってきた。耳ふさいだほうがいいのかなあ。
『好きなわけないだろう。』
『そ…そうなんだ……。』
即答キタアアアア!日吉、凄い即答。しかも超真顔。やめて、凄い傷つくから。私のプライドとかいろんなものが傷つくから…!
『――けど、なんだかんだであの人のこと…俺は嫌いじゃない。』
『…………。』
『じゃあ、行くから。』
そういって風のように立ち去る日吉。最後のつけたしにちょっとときめいたとか、そんな不甲斐ない自分を今すぐ殴ってしまいたい。
「――で、先輩。何してるんですか。」
「ぎゃぁぁぁあああ!ひ、日吉…!何故ここに?!」
「………はぁ。物陰から隠れてるの、見えましたから。」
っわー、告白されてる現場のぞいてたのバレてたのか。なんだか恥ずかしい。
「ってかどうやってこっちきたの?もしかしてワープ?」
「俺に超能力はありません。…向こう行くふりをして、こっちにきただけです。」
「あ、そうなんだ。」
「……っていうか、何でのぞいてたんですか。」
「いや、たまたま出くわしたから…。」
「………そうですか。まったく、タイミングが悪すぎです。」
「……いや、見ちゃってごめんね。怒った?」
「怒ってますよ。」
そういって、日吉がつんっとどこか違う方向を見てしまった。ぎゃああぁっぁあああ!そんな日吉のツンなところも、大大大好きなんだからな!なーんて言ったらもう一生口聞いてくれないような気がするからいわないでおこうと思う。
「……チューしたら機嫌直る?」
「どうしてそっちの発想にいくんですか。むしろそんなことをしたら一生軽蔑します。地の果てまでうらみ続けます。」
「可愛くないこと言うなよ。」
「……花子先輩が変なことを言うから悪いんでしょう。」
「そんな私のことが実は好きなくせに。」
「……それはまた凄い妄想ですね。そういう妄想の力をつけるくらいなら勉学に励んだらいかがですか?そういえば忍足さんに数学で負けたらしいですね。」
「何故知っている。」
「この間部室で大きな声で『眼鏡に負けたあぁぁぁあ!』だの『一生の不覚!』だの叫んでいたのはどこのどなたですか。」
「……あ。」
「……自覚をもってください。先輩はまったくぬけているんだか、抜けめないんだか…。」
「でも日吉は、そうやって説教こきながらも私と一緒にいてくれるよねー。」
何気なくいった言葉だったのだが、日吉が珍しく面食らったような顔をしていたから思わず目を見開いてしまった。
「な…べ、別に!勘違いしてるんじゃないんですか?誰が、あなたなんか…!」
「ツンデレ!」
「違います!」
「そんな真っ赤な顔しながら言い訳したって無意味ですー。っていうかむしろもう結婚しよう。」
「――〜〜、ば…馬鹿なんじゃないんですか!」
日吉は怒ったのか照れたのかよく分からない言動を見せながらも、こちらを振り返らずに行ってしまった。……まあ、いい後輩というかなんというか。
可愛いじゃないか、日吉。
「(って、あれ?日吉、結婚しようって言ったら否定しなかった……?)」
それはもうOKサインなのだろうか。
私を誘っているのだろうか、日吉。