「ねえ、真田。ちょっとこれ持ってみてくれる?」
「……何故ウサギの人形を持たせようとする。」
「いいからいいから!」
雑貨屋さんをまわっていると、可愛らしいうさぎの人形が置いてあった。嫌そうな顔をする真田に無理矢理人形をもたせると、それはそれは素晴らしくミスマッチ。あまりにも面白すぎて、真田に見えない位置でぷぷぷ…と笑っていると、「お、おい!何を笑っている!」と顔を真っ赤にした真田がうさぎの人形を片手にぷるぷる震えていた。
…この人、思っていたよりも話しが通じるっていうか――イメージがかたくない。もっとロボットみたいに無表情っていうか、笑ったりしないのかな、とか思ったけど人間味がある。まあ、そりゃ人間だから当たり前か。
「あ、それよりあっち行こう。私そういえば化粧品ほしかったんだ。」
「……っむ、化粧?」
「年頃の女の子だからねー。」
「お前は別に化粧をしてもたいして映える顔ではないな。」
「失礼だな、おい。ストレートでいいすぎ!」
「お前も普通に老け顔だのパパだの言うだろう。……まあ、映える顔ではないというのは少し言葉のあやだ。お前は化粧をしなくてもじゅうぶんだ、といいたかっただけだ。」
「…………私に惚れたの?」
「それはない。」
「即答――?!」
「…まあ、もう少し女らしくなれば理想かもしれんが。」
サラリと凄いことを言われ、顔が赤くなってしまった自分が憎い。え?り、理想…?!
「それはつまり私みたいな女性がタイプだと?」
「……自意識過剰にもほどがある。」
「いやはや、すみません。」
――まあ、そりゃそうですよねー。私みたいなのがタイプだったら、こっちがびっくらこくわ。
「花子、真田。きたよ」
「あ、おかえりせーちゃん!」
「……真田、まさか花子に手をだしてないだろうね?」
「大丈夫だ、俺はそういった非行に走ったりなどしない。」
「でもさっき私真田にセクハラされたけどなあ。」
「な、何を嘘っぱちを!!」
「へぇ…それはどういうことだい?真田。じっくり花子と俺の3人で語り合おうじゃないか。」
「だ、だから、それはコイツの嘘で――!」
「コイツ?花子のことをコイツだなんていい度胸だね。」
「………いや、それも言葉のあやで――!」
.
..
...
「……なあ、跡部。」
「なんだ、忍足。」
「………幸村って趣味悪いな。」
「てめぇも人のこと言えねぇだろうが脚フェチ。その性癖なおしてから言え。」
「ひ、ひどい…!」
「……まあ、花子の背後には厄介なもんがついているってみんな分かっただろう。」
――あの幸村が、花子のために礼を言うなんざ相当のことだ。…それほどアイツが、幸村にとって大切な存在であるのだろう。
「せーちゃん、やったれー!老け顔倒せー!」
「花子、うるさいよ。黙ってくれる?」
――たまに本気で大切にしているか分からなくなるときもあるが。
END.