「じゃあ、そろそろ話しを本題に持っていこうか。花子と俺の関係やマネージャーになった理由が知りたいんだろ?」
そういうとせーちゃんはアップルジュースに入ってるストローをくるくる回す。
「……幸村、俺もいていいのか?この場に。」
「真田は別にいていいよ。聞いて困るような話しじゃないから。」
「そうか。」
「――あ、でも本題に入る前に花子のオレンジジュース頂戴?」
そういってにっこり微笑むせーちゃん。
「え!いや、でも、あの、その、そういうのはこういう場所では――」
そういった瞬間に横からすっと手が伸びてきて、私のオレンジジュースを奪うとゴクゴクと飲み干す音がした。
「ん〜!美味しかった〜!ありがとね、花子ちゃん!」
「………。」
「うおおおおおおお!慈郎何しとんねん、あれほど出たらあかん言うてたやろ!」
顔面蒼白の私に、あわてた忍足。オレンジジュースを一瞬で飲み干したじろちゃんに、怒っているのか笑っているのか分からない微笑を浮かべているせーちゃん。困った顔をした滝君に驚いたような顔をしている真田など、多種多様な人間がいる。(跡部たちはというと、さすがにじろちゃんの行動にびっくりしたらしくあせって立ち上がったりあわてたりしている。)
「だって花子ちゃんが他の人と間接チューなんて嫌だもん!」
「――忍足。」
「って、何で俺を睨むねん!俺が悪いみたいな目すんな!」
「お前が悪いんだろぉがあああ!監督不行届きだよ。」
「こんなんとめられるわけないやろ!」
「――花子、これはどういうことかな?」
あぁ…声のする方向を見るのさえ怖い。怖いが、見なきゃ後がもっと怖い。おそるおそるせーちゃんの方向を見ると相変わらず微笑を浮かべているせーちゃん。……いや、これは絶対に怒っている。怒ってるときの顔だ、跡部みたいに青筋とか立てないから分かりにくいんだけど、それが逆に怖い!
「ご…ごめん、せーちゃん!すぐ帰らすから!」
「いいよ、花子。俺と花子の関係が気になるなら素直にこっちにきたらどうだい?跡部。」
ドスの聞いたような声に、跡部たちがびくっとしたのが見えた。
「(……あぁ、バレた。)」
最悪だ。なんかもう泣きたくなってきた。
「盗聴器で聞こえているんだろ?いやらしいねえ、そうやって陰で会話を聞くだなんて。それも、ずっと前からつけてたろ。」
「あ、あの、せーちゃん…」
「花子…全く、困った部員のマネージャーになったようだね。おいで、こっちに。」
困ったように滝君のほうをちらりと見ると、滝君も困ったように微笑み返した。
あぁ、あの滝君でさえ困りはてている。
「真田、ちょっと花子と席こうたいしてくれる?さすがに花子を氷帝の部員の横に座らすのは色々と不安だから。」
「あぁ、分かった。」
――そんなこんなで、私は今せーちゃんという神の隣に座っております。怖い。ガタがブルブルなんだけど。
「氷帝の部員たちも隣の席あいてるし座りなよ。そんなに話しが聞きたいのなら盗聴器じゃなくてその耳でちゃんと聞けばいい。」
――氷帝の部員全員顔面蒼白。
本当に氷点下0℃以下だ。みんな凍え死ぬんじゃないかというほど顔があおい。
…肝心のじろちゃんはというと。
「(寝てるうううううう!問題引き起こして寝てるよ、この子おおおおお!)」
ことの原因はどうやら眠りに勝てなかったらしく、寝てしまいました。――あぁ、じろちゃん…なんて幸せそうに眠っているんだろう。
今だけ凄くうらやましい。