「蟹みそ」

「………」

「蟹工船。」

「………」

「カニバリズム。」

「………」

「蟹パン。っぷ。」

「え?何で今白石笑ったの?


かにぱん



何か白石が気持ち悪い。いや、気持ち悪くないことは一日たりともありえないんだけど、いつにもまして気持ち悪い。さっきから、『蟹』が最初につくワードを言って遊んでるようだが(しかも一人で)、何故か蟹パンで笑ってしまった。

さすがに読書をしていた私も読書をする集中力をなくして本をパタリと閉じた。



「……白石って一人で言って一人で笑ってるけど、一体何なの?」

「え?花子もおもろかったやろ、蟹パン。」

「ごめん、おもしろいところがわかんない。

白石の浅すぎる笑いに、思わず溜め息がこぼれ落ちる。



「せやけど、蟹パンやで?蟹のパンツやで?!」

アホか。蟹のパンツってなんじゃい。」

「じゃあ烏賊(いか)パン。」

「おま…名前変えればいいってもんじゃないだろ。」

そんなこといったら、たこパンとかウニパンとかもできるじゃん。っていうか、蟹パンってただのパンだからね!


「まあ、あれやな。蟹パン食べたなってきた。」

「あ、それは分かるかも。」

「せやろ!よし、じゃあ今から買いに行くで!

「いってらっしゃい。」

「って冷たっ?!なんや、蟹パンいらへんのか!」

「だって家帰ったらお母さんがご飯してるもん。そっちのほうが食べたいし。」



そう冷たくあしらうと、白石が泣きマネをしてきた。うわー、うざーい。


「うわあああーん、花子いこー、花子いこー」

「…きもい。今すぐ泣きまねやめたら考える。」

よっしゃ!ほないくで!」

すぐに泣き真似をやめた白石は、パァァと顔を輝かせて私の手をとってぐいぐいいこうとする。…お母さんには、今日のご飯少なめにしてもらおう。



「ちなみにどこいくの?」

「んー、コンビニかスーパー。花子はどっちがいい?」

「じゃあスーパーで。」

広いところのほうが白石と一緒にいられるし。なんて言葉は言わずに飲み込んだのだった。






「(あ、蟹パンや!パンツパンツ!)」

「(ちょ!パンツいうなっつーの!)」




―――――
★あとがき

少しくらい甘くしたかった。←



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