「(よし、今がチャンスだ花子!)」
「(ちょ…お、押すな!豚押すな!)」
「(って、誰が豚だ…!いいからさっさと行けよー、罰ゲームだろぃ?)」
「(で、でも……)」
「(いつまで待たせる気なんじゃ…)」
「(だ…だって……)」
3人で罰ゲームありでババ抜きしたら、案の定私が負けてしまった。…っち、この紅白野郎ども…。勝ったからって威張りやがって。実はいかさましてたんじゃないか?ブン太はしなさそうだけど、仁王あたりとかめっちゃ怪しいもん。
「……はぁ、マジで私がやらなきゃいけないのか…」
「だーかーらー、早くいけってー!」
「わ、分かったよ!じゃ、3・2・1でいくから!」
とは言ったはいいが…真田、本読んでるし。声かけづらい…何だよ、1人だけ独特の空間にいるんだけど…。何だか憂鬱になってきた。そう思っていたら、隣にいる仁王が「3・2・1…」と数えた。
「よし、いけー!」
「う、うん!」
ブン太に背中を強引に押されつつ、教室に入る。私は真田の机の前まで来ると、足をとめる。それに気付いて、真田が本から私へと視線をかえた。
「……む。どうした、田中」
「真田に見てほしいものがあるんです」
そういうと、すーはー、と大きく深呼吸。ちらっと扉のほうを見れば紅白の髪をした男子2名がニヤニヤしてこっちを見ていた。
……やるなら、今だ。
「どどすこすこすこ!どどすこすこすこ!どどすこすこすこ!ラブ、ちゅーにゅう!……お誕生日、おめでとー、ございますー…」
最後あたりは恥ずかしさで声が途切れ途切れになっていた。語尾とかもにょもにょしてしまったし。だって、教室にいた誰もが私のこと見てたんだよ。ちょ…泣きたい。
罰ゲームの内容は、1発芸+誕生日おめでとーって伝えるっていう内容だったんだけど…真田、笑ってない。いや、それもデータのうちだけど。計画内だけど。笑ってもらえないほど辛いものはない。全力でやったギャグだったのに…女の子捨ててまでやったギャグなのに…。(人様のギャグだけど…)
「………誕生日、覚えててくれたのは、ありがたい。が…」
これは…怒られるパターン?そう身構えた時だった。
「……何故、脇を隠す必要がある?」
「え?」
「……だから、何故脇をかくす必要がある?それと、どどすこ?というのは何だ」
「………。」
どうしよう。真田…元ネタすら知らなかったのか。滑っただけではなく、ネタさえ理解してもらえない。なんだよ、これ。超恥ずかしいんだけど。涙目で仁王とブン太を睨んでやったら、あいつらは大爆笑してた。
っく…!なんて屈辱!
「……ごめん、真田。私真田にはもう二度とギャグとかやらないわ」
「?」
「うん…ごめん」
そう謝ると、真田は「?」を頭に浮かべていた。……うん、ごめん。真田にだけは二度とギャグはやらないでおこう。教訓になった5月21日のことだった。
真田にどどすこ
「(ぶぁっはっは!お前…うける!)」
「(ブン太…笑いすぎだろ)」
「(ぶ…くっくっく…)」
「(……こんなに笑う仁王初めてみた…。)」