あー、あちぃ…。何でこんなに暑いんだ。空を見上げれば、照った太陽が俺をぎらぎら照らしている。
……まったく、こんなに暑くてどうすんだ、こんなんじゃ何をする気にもなれない。つーっと頬を伝う汗に、なんだか苛立ちがます。
「え、宍戸どうしたの?今日帽子普通にかぶってるけど。」
「え?あ……、やべ!暑さにやられて帽子が後ろ前反対に…!俺としたことが激ダサだな…。」
そういいながら、宍戸が帽子の後ろ前をなおした。…ってか、本来ツバが前になるんだけどな。
そんな宍戸を見てケラケラ笑っている花子。
「っひー…やめてよ、宍戸。笑い殺す気か!」
「な…なんだよ!うっせぇな!」
「ひゃっはっは!」
「〜〜〜!」
「おい、花子。ちょっとこっちこい。」
花子をよびだすと、花子が「っは?何?」と眉間に皺をよせながら俺様の目の前に立つ。
「目、つぶれ。」
「え?え、何この展開。宍戸どうしよう、私のチューが!ファーストチューが、こんな泣きボクロにとられるなんて屈辱この上なバチンッ!いってぇぇええぇぇえええ!何で?!何で私今叩かれたの?!」
ブンブンブンブンうるさいハエを叩いたはいいが、叩いたら余計にうるさくなった。……このハエ、いつになったらうるさくなくなるのだろうか。
ハエ叩き
「……っぷ。ざまあねぇな。」
「なんだとゴルァ!」
いや、まったく意味が分からん。宍戸の帽子が後ろ前逆だからからかってやったら、何故か知らないけど跡部によびだされて顔をビンタされた。
何でお前にビンタされんだよ…!
ってかキスを期待した自分が恥ずかしすぎる。5分前に戻りたい、やり直したい。
「……ハエがうるせぇ。」
「ハエ?……って、あぁ、花子のことか。」
「え、嘘?!私のどこがハエ!むしろ蝶々だろ!てふてふ!」
「よくて蛾(が)だろ。」
宍戸の言葉に傷つきながらも、跡部がいっているハエって私のことなのかと理解した。…いや、ハエ?
ハエっていったら、あの空中をブンブンただよっている、あれ?
汚いものによくたかっているイメージのある、あの…あれのこと?
「ちょ、いくらなんでもそれは私傷つくわ。」
「お前にそんな心があったか?」
「いや、ありますけど。失礼きわまりないでしょ。」
そんなことをぎゃーすかぴーすか言っていると、跡部がこっちにやってきた。
「え…何、何で近づいてくんの――」
ぎゅっ。
あ、あれ?
意味もなしにまた顔面ぶたれると思ったら今度は跡部に抱きしめられていた。…っていうか、この暑さで何故抱きしめる。ふんわりとかおる跡部の汗のかおり…ファンにしたらたまらないんだろうが、今の私にとっちゃ拷問以外のなにものでもない。今すぐこの場を抜け出したい、心なしか向こうでこっちを見ている宍戸が顔を真っ赤にしている。
「……何してんの、跡部。」
「ハエがうるせぇから黙らせてやっただけだ。」
「何で抱きしめてんの…暑い。」
「っるせぇ。」
「暑い。」
「だからうるせぇっつってんだろ。しばらく抱かれてろ。」
わけがわからん。とにかく、跡部から離れたい私田中花子であった。…あぁ、何かしらないけど背中に女子のファン達の視線がつきささっているような気がする……。
「(……ハエは黙って俺様だけ見てればいいんだよ。)」