ある日急に白石から来たメール。…内容は『来週の日曜日、午後6時から同窓会。場所は道頓堀。中学の頃のテニス部で同窓会やから、絶対誰も欠けんよーに。』とのことだった。


……中学、ねぇ。そういえば中学の頃は私は四天宝寺で男子テニス部のマネージャーしてたっけなあ。

懐かしいなあ、あの頃が。今はすっかり成長して大学生になってしまった。


……みんな、どうしてるんだろ?随分会ってないけど。私はぴっぴと携帯のボタンを押して、『絶対に行くわ』と白石に送った。



現在形




ガラガラッ。


「お!花子やあ!」


「遅いで花子。お前何堂々と鳳かざっとんねん、何様や。」


そういって順に喋るのは金ちゃんに白石だった。――どうやら全員集合しているらしく、私はユウジの隣が空いていることに気付いたのでユウジの隣に座ることにした。

……ユウジの反対側には小春が座っている。あいも変わらず、2人はくっついているのか。この光景を見るのも随分久方ぶりだ。


「…っげ。花子隣に座るんかい。」


何だその嫌がり方。殴っていいか?」


「絶対嫌や。…ほい、メニュー。」


「あ、ありがとー。」


ユウジが私にメニューを渡す。……どうしようかな、もんじゃ焼きもお好み焼きもどっちも美味しそうに見える。



「ユウジは何食べてんの?」


「焼きそば。」


「あ、そうですか。」


ええい、参考にならんやっちゃ。焼きそばを小春と2人で分け合っているのを横目に、私はまたメニューを見た。……もんじゃ焼きにしよっかな。ああ、でもやっぱお好み焼きも捨てがたい!



「(んー…。)」


「……お前何眉間にしわよせとんねん、成長しても不細工はなおらへんかったか…。」


うっさい。成長しても小春ラブなあんたに言われたくない。」


「っは、羨ましいんやろ。」


「羨ましくないわ、自惚れんな。」


「相変わらず口わっる。」


「あんたに言われたくないね。」


バチバチと火花が散っていると、隣の小春が苦笑しながら「まぁまぁ、2人とも。せっかくの同窓会なんやから楽しもうや?」と促してきた。っち…ユウジめ。小春にめんじて今は許してやるが、次やったらあれだからな。問答無用で右ストレートだ。よっし、今のうちから肩ならしておくか。



「――っち、小春に救われよって…。」


「そりゃこっちの台詞じゃい。」



「っていうか、はよたのめや。俺ら食べ終えるで。」


「っげ、マジか!分かった!」



私は迷って迷ってまよった末にもんじゃ焼きにした。……これといって理由はない。もんじゃ焼きって美味しいよね。



「……お前、もんじゃにしたんか……。」


「何、白石。文句ある?」


「えー、別にないけどー……」


「何。」


「俺にもわけて!」


「消えてください。」



そういうと、白石がいじけて隅っこで「の」の字をかき始めてしまった。その隣にいる謙也がそれを必死になだめていて、それを見て財前がため息をついた。って、財前んんんんんん!!!


「財前!あんた…身長のびたのね、グスン。」


「花子先輩は胸…小さくなりましたね。


「財前おんどりゃぁ!人の気にしとるところつくなよ!」


「あぁ、それはすんませーん。」


財前ときゃっきゃ騒いでいると、なんだか隣から視線がきているような気がした。ちらっと見てみると、ユウジだ。ユウジがめっちゃこっち見てる。




「……え、何?」


「え?え、う、いや、別に。」


「ふーん、っそ?」


なんだよ、ユウジ。言いたいことあるなら言えよなー。


……そういえば、ユウジも随分と変わった気がする。前ほど小春に執着しなくなったっていうか、やっぱ一皮むけたっていうか。

それに、大人びたよなあ。かっこよくなった、っていうか。……って、何いってるんだ、自分!アホか!



「(……やっぱ久しぶりに見ると、あの時の気持ちがよみがえるんだよなあ。)」


中学の頃はユウジに片思いをしていた。まあ、ユウジはこのとおり『きもい』だの『ブス』だの言うから告白する勇気やらなんやらもでず、そのまま卒業。ときたまメールをしたりしていたが、こうやって会うのは久しぶりだ。中学生以来だ。


…正直、まだ好きだと思ってしまう自分は未練ったらしいのかもしれない。でも中学のころと変わったユウジを見ると、その気持ちがはっきりと分かってしまいそうで嫌になる。



「……はぁ。」


「横でため息はくなや。幸せ逃げるやろ。」


「うっせ。誰のせいだと思ってんだ。」


あ、やばい。つい本音が…。



「…っは?俺が何してん。」


「え、い、いや?別に?」「……そわそわしすぎやろ。お前さ…ほんま態度でやすいよなー。」


そういうとユウジは私の鼻をつかんでぐにぐにひっぱって遊びだした。あ、それされるのも懐かしい。





「……あの、いつまでぐにぐにする気ですかね、一氏さん。」


「いや、お前の鼻めっちゃ伸びるから。ほら、ぷにょーん。」


ぷにょーんってなんだその擬音!ときめいた自分がいやになる。……っていうか、もんじゃ焼ききてるのにユウジが邪魔で何もできない。離せ!鼻から離せ!


「……ぶっさいくな顔。」


「……それ、何回言うんじゃい。失礼な。」


「いや…懐かしいなあ、思ってな。」


そういうと、ユウジは私の鼻から手を離した。よっしゃ、開放された。



「あ、俺もんじゃ焼きつくるの得意やから作るで。」


「え、別にいいのに。」


「ええって、ええって。」


そういうと、ユウジは袖をまくってもんじゃ焼きを作り始める。……ユウジは好意でやろうとしてるんじゃなくって、素で何か作ったりするの好きなんだよなあ。

こういうユウジの姿も、やっぱりかっこいい。



「……はぁ。」


「……お前またため息はいたな。何でため息やねん、悩み事か。」


「………いや、別に。」


「整形手術とか考えとんのやろ、お前のことやし。」


どんだけ私の顔馬鹿にすればいいんだ。私もいい加減泣けてくるんだけど。」


…好きな人にこんなぼろくそ言われる私って、なんだろう。本当、泣きそう。ため息だって出るよ。



「……お前って、ほんまアホやよな。」


「え、何急に。」


「……整形手術ってそういう意味やない。十分かわええから、お前はそのまんまの顔でおればええねん。分かったか。」


そういうと、ユウジは肘で私の肩をつっついた。……っは。なんだそりゃ。散々ぶすぶすいって、可愛い…?ユウジの口から初めて聞いたんだけど。

口がぽかーんってあいて、閉じない。



「……アホ面。」


「う…うるさい!ユウジこそ何ねん!可愛いなんていわれたら私自惚れるよ!誤解するよ!」


「……すれば?お好きに。」



え。え、え、え、え、ええええええええ!



「な、なんやねん、お前。何顔あからめとんねん。」


「……そういうユウジこそ。」


「っは、コレは紅しょうが食べたからや。」


「……全然隠せてないよ、その嘘。」


急上昇していく頬の熱。――それはユウジも同じらしく、ユウジは恥ずかしそうに向こうをぷいっと向いてしまった。



「………俺、お前のこと好きやった。」


「……っは?」


「……ずっと、ずっと好きやった。同窓会やから言えることやけど、俺、お前に惚れてたんやで。」


な…ん、だ、それ。両思い…だった、ってこと?



「………過去形?」


「……さぁ。」


「………ねぇ、ユウジ。」


私がユウジの袖をつかむと、ユウジがあわてたようにこっちを振り向いた。


「な…なんやねん!急に!」



「……私も、ユウジのこと好きだった。」


「……っは?」


「………私は、過去形じゃないよ。現在形。」


「…………っ、」


ユウジはもんじゃ焼きが入っている器をテーブルに置くと、私をぎゅっと抱きしめる。



「え、ちょ!ユウジ!ユウジ!!!」


「……あーもう、俺あかん。お前のこと…諦めれんみたいや。」


「……私もや。ずっと…ずっと、好きやった。」



あぁ、馬鹿みたいに苦しんだあの日々が懐かしい。……気持ちが分かっていたら、あんな思いしなくてすんだのになあ。


「俺…お前につんけんした態度とって悪かった。」


「……うん。」


「……でも、分かって欲しい。不細工でも、そんなところひっくるめて俺はお前の全部が好きや!


「………。」



――きっと、喧嘩も多いだろうけど一緒に乗り越えていこうね、ユウジ。また出会えたんだから…。








「(ひゅーひゅー!見せつけてくれとんな!)」


「(っげ…白石、)」


「(……ユウ君、あんたも青春やねえ。)」


「(小春ぅ!今までありがとう!)」












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