――部室へタオルを取りにいった、ある日の部活中の出来事であった。
「……ん?何かおちとる…?」
……なんやろこれ。なんかわっかみたいな形みたいな…四角い袋がおちとった。それを拾ってよく目をこらしてみると、コンドームやった。(通称、近藤さん。)
「あわわわわ!な、なんでこないなもんが!」
あまりの驚きに声をだしてしまうと、それに気付いた花子が実に不愉快そうな顔をしてやってきた。
「…何忍足、大きな声だし――」
て、という花子が硬直。そこをたまたまとおりかかろうとする日吉。……なんかもう、最悪や。
「ぎゃあぁぁぁぁぁっぁ!日吉、へるぷ!へるぷみー、私このままじゃ部室に連れ込まれてヤられる…!」
「ちょ、何後ろに隠れてんですか。っていうかヤられるじゃなくて殺られるの間違いでしょう。」
「てめぇもうちょっと先輩いたわれよ…!みなよ、証拠があれだ!」
そういって思い切り俺を指差す花子。……さすがの日吉も、俺の手にもっている近藤さんに気付き、びっくりしたように目を見開いてから――すぐに軽蔑の視線へとかえた。(あれ、日吉?あれ?おかしないか?)
「あぁ…俺もいつか忍足さんがそういう道へ行くんじゃないかと思っていたんです。」
「ちょ…どういう意味や日吉!」
「そーだ忍足!あんたは足フェチだの眼鏡だのロリコンだの最低な条件がそろってたからみんな人としてあんたのこと心配してたんだぞ!」
「誰がいつロリコン言うた。ってか今眼鏡関係あらへんやろ…!しかもお前ら俺の話し聞けや!」
「……忍足先輩、さすがに今回だけは俺も弁護の仕様がございません。」
「どういう意味やそれ。――ってか、落ち着こうや。俺の話し聞けば分かる…!」
「忍足の話しの90%は嘘で出来てるから信用ならないんだけど。」
「ちょ、俺ほとんど嘘しか言うてへんやんけ…!あのな、だからさっきな――」
そういってさっきまでのいきさつを話してみる。とりあえず試合が終わって、タオルをとりに部室へきたはいいが、部室の前には近藤さん(未使用)が落ちていたのだと。
「……怪しい。」
「お前まだ俺をうたがっとるんか。」
「……でも、このようなもの持っていそうな方って忍足先輩以外にいませんよね。」
グサッ!
日吉の言葉が胸にしみる。……うー、俺もっと日ごろの行いよくしとけばよかった…。何でこないに疑われとんねん。ってか、花子がめっちゃ俺を睨んどんねんけど。誰もお前なんか襲わへんわ、くっそー。
「……犯人は誰なのよ。あんた以外にいるわけないでしょ。」
「でも俺やないんや!」
「……スタメンではなさそうですよね。」
「でもこの部室使えるのスタメンと滝君だけだよ。」
「………やばい、謎に謎が深まるばかりや。」
――あぁ、もう犯人とか本当誰やねん。俺むっちゃはめられたわ。…もう、ヤスでもケンジでも誰でもええわ!犯人さん!あらわれてください、ほんまに頼みます…!
「――あ、花子と日吉と忍足じゃん。何してんの〜?」
そういってやってきたのは、眠そうに目をこすっている慈郎やった。…なんやこいつ、可愛さばっか売りにしやがって。専売特許にしやがって、俺とかわれ。
「あ、じろーちゃん見てよ!忍足がさ、近藤さん持ってんだけど。どう思う?」
って、俺のやないんやで――?!そう言おうとした瞬間だった。
「――あ!それ、俺のだC〜!!!」
「「「………え?」」」
「忍足拾ってくれてたの?ありがとう、本当に感謝してるよ〜!」
そういって、慈郎が俺の手から近藤さんを奪うとそのままロッカーへと入れた。
「え、え、あ、あの、あれ?じろーちゃ…?」
さすがの花子も予想外の展開に頭がついていけてなく、舌がまわらないようだった。
「え?どうしたの、みんな?近藤さん持ってるぐらい一般常識だってー」
「「「…………。」」」
可愛いからってだまされたらあかんのやな、って思ったある日の部活のことであった。
犯人はケンジ
「(……犯人は慈郎やなくてケンジやケンジやケンジや)」
「(……忍足何してんの?)」
「(侑士に話しかけても無駄だぜ。なんかじろーが近藤さんもってたことが相当ショックだったんだってさー。)」
「(………なんか…忍足の気持ちわからなくもないんだけど。どうしよ。)」