――試合が終わり、俺はタオルを首にまいてスプレーをしに部室へ向かう。本当なら花子先輩が嫌でも「日吉、私がスプレーするからね。」なんて待ち構えてるくせに今日はいない。……いつも遠慮したり嫌がったりするが、なんだかんだで先輩が待ち構えていないのは少し寂しい。……さ、びしい…?

いや、気のせいだ。断じて気のせいだ、よりにもよってあんな先輩のこと――。

「………で、ここ……とし……はめるのよ」

「あぁ……、………で………んだな!」

「(ん?この声は――。)」

花子先輩と向日先輩の声だ。そういえば、向日先輩も俺と同じくらいに試合をしていたような気がする。

もしかして、珍しく花子先輩が向日先輩にアドバイスでもしているのだろうか。……きっと今日は雨がふるだろうな。


作戦タイム



ガチャッ。


「――で、もし長太郎が"宍戸さんの仇です"とかいってやってきたら長太郎も落とし穴にはめてやればいいのよ!」

「おー!あったまいーな、花子!お前にしちゃあ随分頭ひねったぜ!」

「でしょ!……って、あ、日吉。」

――前言撤回。この人がアドバイスなんてするはずなかった。…少しでもいいように考えてしまった自分が恥ずかしい。嫌になってきた。


「………お二方、いったい何を話しているんですか。」

「やーね日吉、岳人と二人っきりで喋ってたから嫉妬してるんでしょ。分かる、分かるよその気持ち。」

質問に答えてください。

「もー…絶対いっちゃだめだよ!宍戸を落とし穴にはめてやろう作戦。」

「………はぁ。」

「なんでため息ついたの?!え、日吉?!」

……落とし穴って、そんな典型的なパターンにひっかかる人が…宍戸先輩か。誰でもひっかからないようなものを平気でひっかかるのがあの先輩だ。

そんな宍戸先輩を共同作戦でからかいにいく花子先輩と向日先輩はまさに悪魔。――そんな二人も宍戸先輩一人なら作戦をたてずにいくんだろうが、宍戸先輩の背後にいる鳳を恐れているんだろう。

そういえば、この間も宍戸をからかって、それに気付いた鳳が二人をけちょんけちょんにしていたような気がする。(あいつもなかなかの腹黒だからな…。)



「まだこりないんですね…。」

「なんだよ、このひよっこめ!お前も実は仲間にはいりたいんじゃねーか?」

「そーだこのひよっこ、入りたいなら素直になれ!デレを見せろ!」

「……意味が分かりません。」

はぁ、とため息をついてから俺はスプレーをしてから部室をでる。


「(……あの人たちにだけはかかわりたくない。)」


.

..

...




結局、落とし穴作戦を実行した花子先輩と向日先輩は宍戸先輩をはめることには成功したようだったが、それにきづいた鳳によって倍返しされたようだ。

……本当に、俺の先輩たちはどうしようもない。





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