「花子、愛してる。」
ウエディングドレスを着た私に、白いタキシードを着たブン太。教会で愛を誓う二人は今ひとつになるのだ――。
だが、そんな私には今でも忘れられない人がいた。
「(……仁王、)」
…仁王を好きだった私は、仁王に想いを伝えることができずにいた。そんな日々が続き、ブン太に告白されて仁王を忘れたい一心でOKしてしまった。そして、今日、結婚式。
――こんなことなら、仁王に想いを告げればよかった。
目の前のタキシード姿のブン太は、私の肩をつかむとそっと顔をよせてくる。
――それにこたえるかのように、私もそっと目をつむった。
その瞬間だった。
バンッ!
思い切り開いた教会の扉――。そこにいたのは、仁王で。
「……はぁ、はぁ…っ、花子…」
「に…、にお…?」
ざわざわとざわつく周りの人々を無視して、仁王はズンズンとこちらへやってくる。
そして、彼はブン太から私を引き剥がすと大きな胸でそっと私を抱きしめた。
「……お前さんにはやらんぜよ。丸井。」
「……仁王、最後の最後にやってきて…。」
二人はバチバチとにらみ合うと、しばらくして私のほうを見た。
「なぁ、花子。」
「のぅ、花子。」
「「俺と、こいつ。どっちが好きなんじゃ?(だよ?)」」
.
..
...
「っていう、夢を見たんだ。」
「……花子。もう手遅れじゃ。精神科行くか?」
「え、何で精神科!」
「駄目だって仁王!こいつの場合鈍器で殴んねぇとなおらねぇって。」
「そうか…じゃあ花子ちょぉっと待っててくれんかのぅ。幸村に頼んで鉄製のバット貰ってくるからのぅ。」
「ええええっぇえええ、あの、ちょ…!そんなにいやだったの?!私の夢がそんなに不愉快だったの?!怒りに触れたならごめんなさいいいいい!精神科もバットもどっちもやだ!」
「…っていうか、おめぇ…。俺たちのこと、そんな目で見てたのか…。」
「いや、え…?あの、ブン太?あれ?目線が痛いような…。」
「い、いや、うん。夢だから仕方ねぇよ、うん。そういう時もあるって、気にすんな。」
「え、なんでそういいながら後ろに行ってんの。ちょ、いつの間にか仁王いないし!!」
どっちだよ
「(…あいつの妄想癖なんとかしてくれぃ。)」
「(…花子の奪い合いなんて死んでもやらんぜよ。)」