「た、ただいまー…」
「あらあら、お2人さんおかえりなさい」
そういって出迎えてくれる女将さんたち。
…ユウジにキスされてから、ポツリポツリとしか会話をしていない。
一行二行の言葉で、返す言葉は全て「うん」とか「そーだね」だの、本当に最悪だった。
…凄いきまずっ。
「…花子」
「え、あああああ?!え?!」
「…なんやねん、その動揺。
マツタケご飯、今度こそ期待しとるからな」
そういって、ユウジがコツンと私の頭を殴っていく。
――私は「いたっ!」といいながら頭を抱えるふりをして、歩いていくユウジの後ろ姿をぼーっと見ていた。
「(何で…キスしてくれたんだろ。)」
うぬぼれていいんだろうか。
似たもの同士
「ごっはん!ごっはん!花子、きょうマツタケごはんや!」
「うん、知ってる知ってる。分かったから白石お前一番に食べろ。」
「えー?なんでー?…しゃーないなあ、花子はわがままやねんから」
そういって、子供白石がマツタケごはんを一口ぱくり。
ボンッ!
「うぎゃああああ!」
「おぉ?!…なんや、俺元に戻ってるやん!」
そういって自分の手足を動かして喜んでいる白石。
それに続いて、ボンボンッ!と元に戻っていく面子。
「小春ぅ!小春ぅぅうううん!」
「あら、ユウ君!子供の私をお世話してくれてありがとね!花子ちゃんも」
そういってユウジをぎゅっと抱きしめてから、私をぎゅっと抱きしめる小春。
わああぁぁあぁ?!ビックリして思わずぎょっと目を見開くと、ユウジがきょとんとした顔でこちらを見ていた。
「こ…こは、こはるぅ…!離れぇ!」
「あら?ユウ君何で?」
「え、ええから!」
そういって私から小春をびりっと引き剥がして、ほっと溜め息をつくユウジ。
いつもなら『俺の小春に何近づいとんねん!死なすど!』とかほざくはずなんだけど、ユウジはそんなことは一切言わなかった。
「はぁー、俺やっと戻れたー。
財前、お前よくもガキの俺泣かしてくれたな!」
「謙也さんがアホやからちゃいます?」
「んやとー!」
「っぶは。まあ、お前ら2人とも悪ガキやったな。」
「「お前(部長)にはいわれたない」」
――あの後みんなの話しをうかがったのだが、どうやら子供のころの記憶は曖昧だが残っているらしい。
お風呂入ったこととか食事入ったこととか。…白石の体洗わなくてよかった、あいつ結構それひきずりそうだし。
「せやけど、よかったな花子!本物の俺に会いたかったんちゃうん?」
「全然。っていうかどこから湧き出てきたその自信。」
「いやぁ〜、花子が俺に対していっちゃん優しかったから。
っていうか、ユウジ。お前めっちゃ俺に反抗期やったな」
「お前が反抗期なんやろ。」
「はぁ?あれは素直期や、素直にいきてる証があれやん。」
「わけわからん、白石滅っせばええんに」
「失礼な!」
そういってぎゃーすかぴーすか騒いでいる面子。…子供と今も、うるささは変わらないんだなあ。でもこのみなれた風景が一番いいのかもしれない。
ツンツンッ。
「花子ちゃん」
「あ、小春」
ユウジが白石に気をとられていることをいいことに、小春が私の隣に座ってコソコソと話す。
「ユウ君とお幸せにね」
「………はぁ?!」
「あんたら、どっからどー見ても両思いよ。
…まあ、ユウ君馬鹿だから、花子ちゃんが気持ち伝えない限り素直にならないと思うし」
「あ、小春ぅ!何コソコソ話しとんねん!浮気かぁ!」
「死なすど!」
「って、何で白石が俺の台詞とっとんねん!」
「ふはは。ざまぁ。」
そういってユウジを馬鹿にする白石。
…そんな2人を見て、私と小春はくすっと笑いあった。
「…あの2人、ほんま仲ええわねぇ」
「そうだね」
「…まぁ、似たもん同士やからなんかな。」
「?」
「こっちのは・な・し」
まあ…蔵リンもユウ君も、どっちも花子ちゃんのこと好きやからね。
ほんと、似たもん同士の2人やわ。