ちゃぽーん。
「……静かだなあ。」
一人でお風呂に入って、ぶくぶくと泡をふいて遊んでみたりする。
……食事のときに、ユウジが湿布をもってきてくれた。
それも1枚ではなく10枚。
「……罪悪感わくんですけど。」
どうしよう。私、ユウジに迷惑かけてばっかだ。
嫉妬
…あー、どうして私はいつも小さなことでうじうじ悩んでるんだろ。
こういう時だけプラス思考な白石を尊敬する。うん、まあ白石の尊敬できるところはそこだけだけどね。
『ろてんぶろやー!』
『楽しみばいね』
『お前らあんまうるさいと桶で頭ぶん殴るからな。』
『…ユウジさん、しゃれにならないっすわ』
え…この声は、もしかして…。
「わーい!ワイが一番のりやー!」
「うわあああ!金太郎、あかん!タオルまだまいとらんやろー!」
一番のりに入ってきた金太郎を慌ててユウジが後ろから引き止めた。
…幸い、湯気で金ちゃんの大切なものは隠れて見えなかった。せふせふ。
私は何も見てない、見てないんだ…!
「…って、うわぁ?!花子?!」
「……おはこんにちは。」
「おはこんにちはって…。お前、まさか金太郎の――!」
「見てない!断じて見てないから、それだけは信じて!」
そういうと、渋々ユウジはなんとか分かってくれたらしい。(本当にわかってくれたのだろうか。)
それに、そんなの見えてたら私興奮して鼻血だすからね!ハァハァ。
「お前ら、一応女入っとるから絶対タオルまいてこいよー」
『えー、おんなー?ひんにゅー?』
「残念やけど、当たりや白石。」
「お前らマジでどつくぞ。」
そういうと、ユウジがごめんなさいと謝った。…いや、もういいんだ。貧乳でもある意味武器だからね、貧乳が世界を救う!
ポチャッ。
「あち!…うわー…もうちょい温度下げれんのかいや。」
指先をお風呂にいれて、ひゅっとひっこめるユウジ。
…いや、これのどこが熱いのだろうか。お前が普段入っているお風呂はどれだけ氷点下なんだ。
「ざいぜんぱーんち!ざいぜんきーっく!」
「ぎゃああぁぁああぁ!やめ、やめえええい!」
そういいながらお風呂場で暴れているアホ2名。……あーあー、危ないよ、あの2人本当危なっかしいんだから…。
「こら、財前!謙也、あんまりはしゃいでいるとドンッ!バシャッ!……ほら、はしゃぐと人身事故が起こるんだよ。」
財前から逃げていた謙也が、運悪くユウジにぶつかってしまった。
…そのユウジはというと、顔面からお風呂にダイブ。さっき熱い熱い言ってたのに、大丈夫なのかなあ?
「ユウジ?だいじょ――「あちいいいいい!謙也、お前なああああ!」
「ぎゃああっぁぁああ!お風呂から河童でてきた、うわああああん!」
「「…………。」」
いくらユウジといえど、河童がでてきたと言われて怯えられたら怒るに怒れなくなったらしい。
「……っち、河童ってなんねんや。謙也め、元に戻ったらみとれよ。」
「ざいぜん、河童こわいいいい!」
「……あれのどこが河童なんすか。
ユウジさんっしょ…」
財前はというと、はぁーっと呆れて溜め息をついている。
そんな光景を眺めていると、タタタタタ!と走ってくる音とともにお風呂のお湯がバシャンと顔面にかかった。
「うわ…!」
「花子、きたで!」
「……いや、誰もこいなんていってないですけど。」
子供白石がお風呂に飛び込んできたらしい。…気がつけば、ちゃっかり隣にいるし。
本物だったら蹴飛ばすのになあ。
「それにしても――」
ちらりと私の胸を見てはぁーっと溜め息をつかれた。
え、何それ。
めっちゃ腹立つんですけど。
「…おれの姉ちゃんよりちいさいなんて…」
「え?今なんか言った?」
「ううん、なんもいっとらんで!おれはちっちゃいおっぱいのが好きやからええねん!」
うわー、大人になったら見てろよ白石。お前一番にボコボコにしてやる。
「あ、それより頭洗ってあげよっか?白石。」
「え?ほんまあ?やったー、あらってあらって!」
「はいはい、じゃあ向こういこっかー。」
そういってお風呂からでようとした瞬間だった――。
「ああああ、あかん!あかんで、花子!」
「……え?」
「せやから、おま…あかん!」
顔を真っ赤にして動揺しているユウジが私を引き止めた。
…何がいけないんだろ。
「?」
「お…俺が白石洗ったるから、お前は自分の体だけあらっとればええねん!」
「…あ、そ、そう?」
「あああああ、でもここで体洗ったらあかんからな!ぜぇったいにやから!」
何を言いたいのか分からなかったが、ユウジは白石の手をとって「ほらいくで」と引っ張っていく。
露骨に嫌そうな顔をする白石。
パシッ。
「…さわんなや、ユウジ」
「え、お前なんやその反抗期な態度。」
「っち。…やろーに体あらいながされてもぜんぜんうれしないわ。自分であらうしええわ、しっし」
「!!なんやお前、俺にだけにやけにたてつくなあ、おんどりゃあ!」
「せやからやろーなんかに洗われたないねん。
じぶんであらうしええわー」
そういって白石がタタタタと一人でいってしまう。
「(…可愛さに騙されるところだった。)」
あぁ、よかった。純粋無垢なふりをしてる白石に騙されるところだった。
「あらーん、ひかる!ええからだしとるやないの、ろっく☆おん!」
「うわああっぁあ!謙也さん逝ってこい。」
「えぇ?!逝ってこいってなんやねん!って、ぎゃああぁぁああああ!ひっつくな、ひっつくな小春ぅううううう!」
「…………。」
どうやら、財前にひっつこうとした小春を、謙也を盾にして財前は自分の身を守ったらしい。…相変わらず小春はくっついて遊んでるなあ。そこは昔のころからかわらないのか。
「ふぎゃあああああああ!」
「あら?…謙也、失神しちゃった。」
「って、小春!何浮気しとんのや!」
「(謙也…ご愁傷様です。)」
泡をぶくぶくふいて失神している謙也に、そっとお祈りをしたのだった。