「…っていうか、こんなんで強化合宿できへんなあ。」

「……確かに。」

部員も全員幼児化しちゃったし、
(まあまだ頼れる)オサムちゃんまでもが子供になってしまった。

…どうしようもないよ、この状況。


えくすたちー





「花子、花子!」

謙也をおんぶしていると、下から私のズボンをひっぱってくるやつが1匹。
誰だろ?そう思って下を見ると、可愛らしい白石が私のズボンをぎゅっと握っていた。

「…どうしたの、白石」

「あんな、あんな。みてほしぃもんがな、あんねん!」

そういってえっへんといばっている白石。
…可愛いから許す。


私は泣きつかれて半分寝かけている謙也をそっと座布団を枕にして寝かせた。
可愛らしいもんだ。子供の寝顔って最高。


「いくで、花子!」

「あ、うん。はい。」

「んん〜、えくすたちー!」


「「………。」」

ユウジと顔を見合わせて、思わず溜め息をつきそうになった。(あ、ユウジはため息ついてる)



「どやった?!俺の、えくすたちーは!」

「(エクスタシーって言えないのが可愛い。)うん、パーフェクトだったよ」

「せやろせやろ!花子大好きぃ!」

そういって白石が正面から私の首に巻きついてきた。


グハッ…!

こやつ、私の顎に頭突きかましてきた!イテェッ!





「おい、コラ白石。」

「…花子、俺この河童みたいな兄ちゃんこわーい」

な…っ!何かわいこぶっとんねん!
 可愛くないんやおんどりゃあ」

――子供の白石に喧嘩をふっかけるようにしてバチバチと火花を散らせる二人。
…やめてくれよー。

幼児化しただけでもめんどくさいのに、これ以上問題ごとを起こさないでくれ。



「あ、もしかして河童の兄ちゃん、」

そういってニヤニヤする白石。

「花子にやきもち?」

「な……っ!んなわけないやろ、どたまかちわるど!」

そういって、ぎゃーぎゃー騒ぐ二人。

小さくてすばしっこい白石は後ろから追いかけてくるユウジをひゅんひゅんと避けてまわっている。…子供になっても白石の性格は根から腐ってたか。



「…花子、」

そういって今度は千歳がうるうるな瞳で私の前にやってきた。


「どしたの?千歳。」

「ジブリ映画…みたいばい」

「………。」

いやいやいや私にどうしろってんだ。
ジブリ映画なんてもってきてないし…。

あ、そういえばロビー的なところにテレビあるんだっけな?



「ジブリ映画は無理だけど、テレビとかなら見れるけどどうする?」

「ん。テレビでいい」

「そっか。千歳はいい子だね、じゃあ見にいこっか。」

「あ、わいもいきたーい!」

「はいはい、金ちゃんもね。」

どんちゃん騒ぎをしているところから金ちゃんと千歳を連れ出してロビーへ行く。
…なんだか知らないけど、
真ん中に私で左手は金ちゃん、右手は千歳が握っていた。


…うぅーん、なんだろうこのポジション。




ロビーへつくと、丁度誰もいなかった。
よしよし、これなら迷惑もかからないしよかったよかった。



「何みよっか」

そんなことを言いながら、ロビーのイスに座ってチャンネルを回していく。
すると、千歳と金ちゃんがある番組のところで声をもらした。



「「あ!」」


「…二人ともこれが見たい?」

「見たいたい!」

「わいもみたい!」

「はいはい、じゃぁこれね。」


動物の特集てきな感じで、犬や猫とたわむれたり遊んだりするほわんとした番組だった。
…まあ、私も嫌いじゃないし丁度いいや。




「にゃんにゃんかわええー!」

「おれはわんわんもかわええとおもうたい」

「ぜぇったいにゃんにゃん!」

「わんわん!」

そういって両サイドからにゃんにゃんかわんわんかでもめる声が。
――私を間に挟んで喧嘩はやめておくれ、おふたりさん。



「「花子はどっち?!」」


「……っは?」

「にゃんにゃんや、にゃんにゃん!」

「いや、わんわんばいね!」

「…………。」

これは、どっちをとっても喧嘩フラグじゃないのか。
マジで嫌んなるんだけど、これ。



「んー…まあ私はぴょんぴょんかな。」

「「ぴょんぴょん?」」

「ウサギ。」

これが一番マシな回答なような気がする。
二人とも、少し不満げだったがテレビをくいいるように見ていた。



「……ふたりとも、寝ちゃったか。」

気がつけば、千歳も金ちゃんも寝ていた。
…こんなところで寝かすわけにもいかないし、ユウジに電話しよう。




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