「――ぅー!なんでおればっかゲベなんっ」
そういって子供ユウジが拗ねだした。どうやら子供になってもユウジはババ抜きのババばかり引いてしまうらしい。あーかわいい。その運のなさに同情してしまう。
「…花子、おれつかれたー」
「ぶはっ!子供ユウジ、ひひひ、ひざままま!」
膝枕だとおおおおおおお?!
番外編-ユウジが子供に?!-
「…ふぅ。じゃあ邪魔者は退散しますわ」
そういって、財前が空気をよんで部室からでていってしまった。子供といえど、ユウジはユウジだし、元に戻ったら子供のときの記憶が残ってるはずなんだよね。
…っていうか、白石、何でマツタケとか私に食べさそうとしてたんだろ。
「(食べなくてよかった。)」
「なあー、花子」
「ん?どしたの?」
「………おれの、およめさんなってな」
ぶほっ!思わず吹き出してしまう。
ちょちょちょ、何?!お嫁さんなれってか?!
分かった、全力でお嫁さんなります。
っていうか、ならせてください。
「…う、うん、ユウジのお嫁さんになるよ」
「ほんま?!……でも、花子…わるいひととばっか、からんどるし…しんぱいやあ、おれぇ…」
そういって、膝枕をしているユウジがきゅっと私の服を掴んだ。
この可愛い生き物を今すぐテイクアウトしたい。可愛すぎる。
「……大丈夫だよ。私はユウジしか見てないから。」
「……ほんま?」
「…本当だよ。ユウジ以外はありえないって、思ってる。」
これだけは胸を張っていえるんだ。
――ユウジだけを愛せるってさ。
まあ、普段は恥ずかしくていえないんだけどね!…今だからこそ言えるんだ。
「……なー、花子…ちゅー、してぇ?」
「え…?え、え、え、?」
「せやから、ちゅー。花子のあいがほしい」
そういって、ちゅーしてちゅーして!と騒ぎ始める子供ユウジ。……もう私は降参です。大人でも子供でも、どっちのユウジにも敵わない。
「……うん、分かったよ。じゃあ、目つぶって?」
「ほんま?やったー、わかった!」
そういって、目をつぶるユウジの唇にちゅっとキスを落とした。…じじじ自分からしちゃった!やばい、恥ずかしい!
「花子、すきぃ」
そういって、へらっと笑う子供ユウジ。
…あぁ、私の理性という鎖が今この瞬間はずされr「はいはい、ほなそろそろ戻そうか。」……っげ、白石。」
私の鎖がはずれかける前に白石が丁度よく止めに入ってきた。
…くそっ!白石め、後で覚えてろ!
「ほら、ユウジ。マツタケ食べぇ。」
「……いらん」
「食べぇって」
「いらんったらいらん!」
まあ、ユウジがそういう気持ちも分かります。だってマツタケ生だもん。
せめてさ…炒めたりとかしてあげたりすればいいのにね。
「花子ー…」
「……ユウジ、大丈夫だよ。一口でいいからぱくって食べて」
「で…でもぉ、」
そういって不安そうに私を見上げるユウジ。…本当はもっと子供ユウジと遊びたいんだけど、そろそろ私も本物に会いたくなってくる。
「……大丈夫。私を信じて」
「お…おん、」
ユウジがぱくり、とマツタケにかぶりついた。
ボンッ!
「うわああああ!また煙!けむいけむい!」
そう叫んだと同時に、目の前には元に戻ったユウジがいて。
「……ただいま、花子」
といって微笑んでいた。
なんだかそれが嬉しくて、思わず「おかえりなさい」といって抱きしめる。
「……っち、なんや、こいつらの仲を親密する材料になってもーた…。」
そうぶつぶつ呟きながら、白石が部室を出て行った。…あいつ、何をしたかったんだろ。
「…まさか俺が子供なるとおもわんだわ」
「あはは、でも可愛かったよ?」
「か…かわいって…!アホか、もう二度と子供なんてこりごりやわ!」
まあ…私は今のユウジと一緒にいられればそれでいいんだ。…幸せすぎる。
「…そーいえばさ」
「うん?」
「……お嫁さんの話し…」
そういわれて、ぼぼっと顔が赤くなっていく。な…何でその話題を今浮上させた!触れてほしくないところなのに!
「い、いやあれは!その――…」
「…俺、めっちゃ嬉しかったんやで。
……好きや、花子。」
そういって、ユウジにぎゅっと抱きしめられる。…好きって伝えたいのは私も同じだ。
「…私も、好きだよ」
「…はは、あんがと。…もう1回、ちゅーしてもええ?」
「……やだ」
「えぇ?!」
「嘘。……ちゅー、しよ」
そういうと、ユウジが安堵の息をついてからそっと私の顔に自分の顔を近づけて言った。
「……愛しとるで、花子」
「………っ!」
世界中の誰よりも、お前を愛しとるから。
…こんな恥ずかしいこと、なかなか口に出して言えんけど、今やから言えるんや。
"愛しとる。"
Fin.