「あ、花子!おかえりなさい!」

部屋へ帰るなり、白石が私の足元にぎゅっと抱きついてきた。


「…千歳は?だいじょうぶなん?」

「うん、千歳は大丈夫だよ。
 生きてるし、心配ないってさ。」

「…ほんま?ならよかった!」

そういってわーい!といいながら飛び跳ねている白石。
……金ちゃんもそれを真似して飛び跳ねていた。頼む、白石、金ちゃんが真似するからやめてくれ。


らくがき




ユウジの部屋へいこうとするなり、廊下に財前と謙也がいた。
…何してるんだ、この子たちは。


「あ、花子さんおかえりなさい」

そういってトテトテと抱きついてくる財前。
っもー…可愛いすぎる。


「花子!ほら、みてみて!」

「あ…紙飛行機?」

「おん!ほらほら、おれの作った紙飛行機めっちゃむこうまでとぶねん!」

そういって謙也がえいっと投げると、紙飛行機はびゅーんと遠くまで飛んでいった。


「…紙飛行機とか謙也さん、こどもっすか」

「な…!おまえも子供やろーが!」

「おれはこどもでもせいしんねんれいは成人してるんで」

「なんやそれ、さっきまで紙飛行機であそんでたくせに!」

そういうと、財前が「なんのことでしたっけ?」ととぼけた。
…っわー、財前、いっちょまえに謙也に喧嘩うってんじゃん。


「っもー、あたまきた!
 おれもう、カンカンにおこったからな!」

「…なにかってにおこっとるかわからんし」

「んやとー!」

謙也が財前に飛びかかろうとするのを、ユウジが止めて二人のおでことおでこをゴッツンコさせた。

ゴチンッ!

うわ…めっちゃいい音した。



「コラ、お前ら喧嘩ばっかしとんな。」

「「せやけど〜っ」」

「何や、言い訳はきかんで。…ほら、花子困らせたらあかんやろ?」

そういってユウジが泣きべそをかいている謙也をひょいとかつぎあげて頭をナデナデした。

仕方ないので、私は財前をひょいとかつぎあげる。
うひゃー、軽い。
私の体重の何倍も軽いは。肉分けてあげたいくらい。


「うぅー、花子さん、すんません…っ」

「あはは、いいよ財前」

「……花子、すまんな…」

「謙也もいいって。」

二人が可愛いので許す。もう私犯罪の色に染まってもいい!

あぁぁぁああ、二人をお持ち帰りしたい、
このまま一生戻らなくていいのに…っ。



「ほな、夕食の時間やしそろそろ行くか。」

そういって謙也をかかえたまんまのユウジがニッコリと微笑んだ。


.

..

...




コンコンッ。

お風呂も入り、疲れがどっと出て寝かけていた私に訪問者が現れた。
うーん…こんな時間に誰だぁ?

時刻を見ると、11時をまわっている。

…まったくもう。



ガチャッ。

「はいはー……、って、え?」

「やっぱ部屋ここやったのね!よかったぁ」

そういって、子供小春が部屋にやってきた。
…どうやら小春は子供になってもIQが高いらしく、一番大人びている。っていうか、実際私よりも大人びてるんじゃないだろうか。


「……どしたの、小春?」

「いやぁ〜ね、共犯ほしくって、花子ちゃんよびにきたのよ」

「…………っへ?」

共犯?…何しでかそうとしてるんだ、小春は。



「今ユウ君寝てんのやけど、一緒に顔に落書きしない?」

「……え?何それ、めっちゃおもしろそう。

「なら決まりね!ほな、いきましょ!」

そういってずんずん進んでいく小春についていく私。
…ペンは油性なのかな。水性なのかな。

そんなことを考えていると、部屋についていた。


ガチャッ。


「そーっと入ってね、ユウ君寝てるから」

「あ…うん」

物音を立てないように入ると、
バンダナを外して「すー」という寝息をたてたユウジがいた。

…しかし、その隣には財前がいて、手にはマジックがもう握られていた。




「光、もう書いたの?」

「まだっす。」

「あら、まだなの。…んー、じゃんけんして勝った人からユウ君に落書きしていきましょ?」

そういう小春の提案にのった私達は、じゃんけんをした。
順番は、小春、私、財前となった。


「じゃあ私からいくわね。らぁ〜ぶっ」

そういいながら、ユウジのほっぺにハートをかく小春。
…あらあら可愛らしい落書きだこと。


「はい、花子ちゃん」

「おー、ありがとー。」

さて。これは結局何性のマジックなのかな?

マジックを見てみると、そこに書いてあったのは『油性』だった。
……鬼畜だな、おい。

油性ってなかなか落ちないんだよね。まぁ気にしないけど!


「じゃあ、私はこれで」

そういいながらユウジのまぶたの上に目を書いた。
ちゃんとまつげ付きで。

それを見て、財前が「ぶふっ」と笑いを噴きだした。



「へい、バトンタッチ財前」

「……はい」

財前は目の下の涙袋あたりを念入りに濃く線をひく。

……うわぁ、マジ怖い。
おばけみたい。半端ないよ、こんな人いたら。


「はいどうぞ」

「ありがとう、ひかるん。じゃあ、わたしは――…」



どうやら夜は長いらしい。



- 16 -


[*前] | [次#]
ページ:




「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -