「よし、女将さんに医者の地図も貰ったしいくで!」

「あ…、うん」

ユウジは千歳を背中に抱えると、
そのまま旅館をでた。

…私もその後ろを慌ててついていく。


「…俺千歳のこと持っとるから具合わからんし、顔色とか悪ぅなったら教えてくれや」

「あ、うんわかった。」


ふたり



バスから降りて歩きつづけて15分。

「……千歳、大丈夫?」

「………ん、」

「……ユウジ、千歳ちょっと汗やばいんだけど。
 そこのコンビニでお茶買って飲ませてもいい?」

「あ、おん。ええで」

真っ赤な顔で途切れ途切れな感じに息をしている千歳。
わー…めちゃくちゃしんどそう。

私はコンビニへ入るとお茶と熱さましーとを買って外へでた。

ピタッ。


「……はい、千歳お茶飲んで」

「……ふぁ」

ふぁって、千歳がふぁっていった!可愛い可愛い!
携帯で激写したいけど、今はそれどころじゃないんだった。

…仕方ない、今のは私の心のアルバムにおさめておこう。


「…千歳、だいぶしんどそうやなあ。」

「…ううーん。まあ、一応熱さましーとはっといたから、少しは楽になると思うけど…。」

「…せやけど、やっぱ医者にはよ診てもらったほうがええなあ。
 よっしゃ、少しでも早く医者んところいくで」

そういってユウジがまた歩き出す。
――地図を見る限り、もうすぐ小児科の近くなんだけど…あ、あった!


「ユウジ、あった!あれじゃない?」

「あ、ほんまや!あれや!」




――院内へ入るとだいぶすいていて、すぐに診察してもらえることになった。
ただの風邪だったらしく医者から薬を貰った。

…粉薬だけど大丈夫かなあ。

そういえば小さい頃、私粉薬嫌いでいっつも鼻息で粉薬飛ばしてた気がする。
それで飲んだふりしてお母さんに「飲んだよ!」っていっていた覚えが…。


まあ、千歳は大丈夫か。




「ほな、花子戻るで」

「あ、うん、わかった」

「……まあ、診察代とかは部費からおろせばええしな。」


バスに乗りながら、ユウジはそんなことをポソリと呟いた。
…うん、まあ診察代って結構かかるしね。馬鹿にしちゃいけないよ、うん。




「お、ついたで」

「あ、本当だ。」

――昨日といい今日といい、
そういえば私…ユウジとずっと一緒にいるような気がする。



「……ねぇ、ユウジ」

「おん?」

「……私と二人っきりで、嫌じゃないの?」

率直な質問を思わず言ってしまった。
言ってからその軽率さに顔を赤くさせる。


「あぁぁ、いや、そうじゃなくて…」

「……嫌やないけど。」

そういってズンズンと行進してくユウジ。


「……ほんと?」

「あー、うっさい!
 嫌いなやつと隣あって歩くほど、俺は優しないわ!」

斜め後ろから見て分かったが、ユウジの耳が赤くなっているのが見えた。






「(…あ、照れてんのかな)」

…そう思うと、心が弾んだ。




「あー、なにちんたら歩いとんねん。
 はよせぇや」

「はいはい、早く歩きますって」

「…お前、どうせ明日も暇やろ」

「………どうせって何、どうせって。」

「せやから、どうせ暇やろって。」

「……まあ、暇だけど。」

「なら、一日テニスの相手せぇや。俺の。」

「うん。……って、は?」

ポカーンと口を開けながらユウジのほうをみると、ユウジが「おお、なんて酷い顔しとんのや」と笑った。

……おま、ちょ、え?
一日テニスの相手?

いや、そりゃあ嬉しいよ。
嬉しいとも!

けど、長くないですか?一日って…午前と午後っていうことだよね?


「……あの、そんなに長くやるの?え?」

「おん!体なまっとるからな、鍛えんなあかんわ」

「……。(それで十分だと思うのになあ。)」

けど、一度練習を休んだら取り戻すのに三日かかるって聞くしね。
仕方ない、つきあってあげるか。





「(私もユウジに弱くなったもんだ。)」


ユウジの笑顔を見られるだけで、心がドキドキする。
一緒にいるだけで幸せだと思う。


…本当、末期症状すぎる。





「(……ユウジは、どうなんだろう。)」

こんな私のこと…少なくとも嫌ってはないんだよね?



できればそう願いたい。




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