――問題は起こった。
「花子!花子、たいへんやあ!」
「ん?どうしたの?」
「千歳がぁ、」
白石たちの部屋へ入るなり、慌てた白石が私のところへウルウルな瞳で抱きついてきた。
「千歳が?」
「千歳が、しんどる!」
高熱
ドタドタドタッ。
ガチャッ。
「ユウジ!ユウジ、おきて!」
「ん…小春ぅ、それは…蟹やないで…」
「お前どんな夢見てんだ!それより、早く起きて!千歳が!」
そう叫ぶと、ユウジがうっすらと目をあけた。
「ん…千歳が、どないしてん……」
「千歳が、死んでる!!!」
「……っは?」
ユウジが目で『お前はアホか今すぐ病院へいけ』といった表情で私を見てきた。
いやいや、私もそういう意味で言ったんじゃないよ!
っていうか、その目ウゼエェェェエエエ!
マジで千歳が死んでたもん!
どうしよ、どうしよ、ユウジ!
「…とりあえず、事情を説明しぃや。」
「なんかね…、朝起きて白石の部屋行ったら、千歳がベッドで寝たっきりで起きないの。顔真っ赤で、苦しそうで…もうすぐ死ぬかもしれない」
ゴンッ!
「あだ…っ!」
「アホ、それのどこが死んどんねん。全然生きとるやないか。」
そういいながら、ユウジはもぞもぞと布団からでると何やら支度をしている様子。
「……お前も着替えや、ちょぃ早いけど出るで」
「え?え、え?観光地巡り?」
「どついたろか。
…それはきっと熱や、とりあえず千歳に水かお茶か冷たいもん飲ましてやり。」
「あ…うん、わかった!」
そういうと私は部屋をでて千歳のところへいくと、
苦しそうな千歳に水を飲ませる。
「……千歳、大丈夫?死んでない?」
「………んっ、」
「花子、千歳は大丈夫なん……?」
しゅんっとした表情で千歳を心配する金ちゃん。
「……大丈夫だよ。すぐによくなるから。」
「ほんまぁ?…でも苦しそうやで?」
「大丈夫。ユウジが保障してくれるから。」
…ユウジが大丈夫、っていうんだから、きっと大丈夫なんだ。
私はユウジを信じる。
ガチャッ。
「花子、こっちは俺に任して支度してき」
「あ…う、うん!」
私服に着替えたユウジが千歳の元へ歩みよるとおでこに手の平をあてて呟いた。
「……ぁー、これは高熱やな。
こういう時に熱だすってどないやねん、千歳」
そう文句を呟くユウジ。…でも放っておけないんだろうなあ、きっと。
「(…ユウジは、優しいんだなあ。)」
うざい、嫌い、っていっといてもやっぱり相手の心配はするんだな。
…そんなユウジを知ることができるのも、一番近くにいれるマネージャーの特権なのかもしれない。