「じゃあ、帰るで」

しばらく休憩をとってから、ユウジがそんなことを言った。

「え?」

「えって、なん。…俺がよくてもお前が疲れとったらあかんやろ、帰るで」

そういってユウジが席を立ち上がった。

「(…一応気遣ってくれたのかな?)」

自分に体力があれば…なんてちょっとの後悔をしながら私たちは旅館へ戻った。


悪夢再来





「――あ、花子やぁ!」

「おぉ、食べてるじゃん」

女将さんたちに頭を下げながら私とユウジも夕食をとることにした。
…そんな私たちにいちはやく気づいたのは白石。


「花子、おそいで、何しとったん?」

そういって、席を立ち上がると私の腰にぎゅっと抱きついてくる。
――本当だったらグーで殴ってやるところなんだけど、子供の姿って本当やらしいなあ。

殴るよりも、むしろ抱きしめたくなる。



「テニスしてきたよ。
 白石はいい子にしてた?」

「おう、してたで!でも謙也が廊下走りまくってこけとった」

「あ、白石ぃ!それいわんっちゅー約束やったやろ!」

どうやら子供白石は子供謙也の黒歴史をいとも簡単に暴露したらしい。
謙也が顔を真っ赤にして怒っている。


「ううう、ひどいで、しらいしぃ…」

「あぁあ、謙也よしよし」

そういうと、謙也が私の腰に抱きついてきた。…泣きながらだけど。


「うあぁぁぁぁぁあぁん」

「(謙也昨日からめちゃくちゃ泣いてるんですけど、水分たりてるのかなあ。)おおー、よしよし。」

「花子、俺も!おれも!」

「え?白石むしろ加害者じゃん。
 やらないやらない。」

「ちっ。」

「舌打ちしてもやりません。」

腰に白石と謙也が抱きついていて、正直ウザイ。
――っていうか、私ご飯まともに食べれないんですけども。



これは援護を頼もう!そう思ってユウジのほうをちらりと見ると、




「小春ぅ!ほら、小春の大好物の梅干しやで、ほら!」

――パシッ。

「あたし、変な人から物はもらわんっておかんにいわれとんねん。」

そういって小春がぷいっと銀さんの方向を向いてしまう。



「そんなああぁぁ!小春ぅぅう、酷いで、
 俺を変な人ってえぇぇ!」


「(小春にめっちゃ嫌われてる嫌われてる、ぷぷ)」

やばい、ユウジ見てると笑ってしまいそうになる。
どれだけねばって頑張っても、小春の心は動かないらしい。

……諦めろ、ユウジ!




「なぁー、花子。トイレ連れてって」

「えー、オサムちゃんそれぐらい一人でいきなよ。」

「わからんもんっ。」

仕方なしに、オサムちゃんを連れてトイレへ行くことに。
…騒々しいメンバーだな、本当。


「(…悪夢再来だな、こりゃ。)」




早くマツタケ買ってきて、食べさせよう!


特に謙也とか謙也とか謙也とかにね!



「あ、花子どこいくん?」

「え?オサムちゃん連れてトイレ。」

「……トイレって、お前女やろ。」

「だけど、オサムちゃん行きたがってるし。」

「……しゃーないし、俺もついてったるわ」

そういってユウジも席を立ち上がった。
…そういう何気ない優しさがずるいと思ってしまったりする。





「(ユウジって本当何なんだろ。)」

冷たかったり優しかったり。
分かりにくいのかと思ったら分かりやすかったり。

…そんなユウジをつい目で追ってしまう自分にも嫌気がさしてくる。





「(穴があったら今すぐ入りたい。)」

そしてそのまま土に埋まってしまいたい。



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