「はぁー、疲れたね。」

「何疲れとんねん。
 今からテニスするんやで?」

そういってきたユウジに思わず「えっ!」と声を荒げてしまった。

「…何ビックリしとんねん。
 はじめからそういうプランやったやろ?」

「え…でも、この疲れでまだテニスできんの?」

「できるで。」

…なんだその馬鹿みたいにありあまってる体力!
私もその体力と元気がほしかった。


デートの後は





「――で、グリップはこうやって持つ。」

「ほぉほぉ。」

「『ほぉほぉ。』やなくてほんまわかっとるんかいや…」

そういってユウジがはぁ、と溜め息をついた。
失礼な!私だって伊達にマネージャーしてるだけはあるんだからね!


「…まあええわ。ためしにサーブ打ってみ、俺が球出ししたるし」

「え、もう実戦します?」

「なんや文句あるか?」

「……ありませーん。」

ユウジの威圧感に押されるように、
私はサーブを打った。

パコーンッ!


「おおー!打てた!」

「……おおー、馬鹿力なだけに剛速球やな。」

馬鹿にしてんの?

「はは、銀さんほどやないけどなかなか力強いいうとんねん。」


…まあ、これって褒められてるんだよね?プラスに考えよう、プラスに。



「じゃあ、ためしにラリーも続けてみるで」

そういってユウジがサーブをしてきた。
え、ちょちょ、ちょっとま…!


「っほ!」

パコーンッ!

「お、なかなかやん。」

パコーンッ!

「ボール重たいいいいいい!」

パコーンッ!

「そりゃそうやろ」

パコーンッ!

しばらくラリーを打ち続けて、区切りのいいところでユウジがストップした。


「……はぁはぁ」

「お前もうばてとるんか。体力つけなあかんで」

「はぁ…っ、あんたに言われたく…ないわ…っ」

さっきまで川であんなに遊んでいたのになんだその有り余った体力!
本当に意味わかんないんですけど。

ユウジは疲れている私を見かねてか、「休憩やな。」といってどこかへいってしまった。
…一人ぽつーんと取り残された私。


「……え、どこいったのあの子」

何もいわずにどっかいっちゃうってどういうこと。
…そんなことを思いながらも、ベンチに座って広いコートを見渡した。




このコートにじゃないけど、
ユウジ達はいつもコートの上にたって試合をしているんだ。

この小さな四角の中で、自分の持っている実力を出し切る。

…なんか変な感じ。



「…こんな小さな球が試合の勝敗を決めるのか」

泣くのも笑うのも、その人の実力しだい。
――そんな緊迫した中で、ユウジも小春も笑いをとろうとする。

…周りから見たら変人扱いかもしれないけど、
私はそんな二人のプレーが好きだったりもする。


"勝ち"にこだわらず、"楽しむ"ことにこだわるテニス。
――私は少なからず、後者に賛成だ。

テニスって、楽しまなきゃダメでしょ、うんうん。



「ふあぁ…眠たい」

「…大きな欠伸やな。」

欠伸をしながら大きくのびをした瞬間に、背後からユウジの声とともに冷たい何かが頬に触れた。

「ぎゃっ」

「…ぎゃって、かわいらしない悲鳴やな」

そういってユウジがぷっと笑う。

――あ、これって。



「……ありがと」

「どういたしまして」

どうやらユウジはお茶を買いに行ってくれてたらしい。
…なんかいいやつ。


ユウジは私の隣に腰掛けると、お茶を飲みながら言った。





「……なぁ」

「ん?」

「……お前はさ、」

そこでユウジが言葉を止めて何かを考え出す。
――ユウジ?


「……どしたの?」

「か…彼氏とかおるんか」

……っは?
はいいいいいいい?



「かかか彼氏?!」

「ば…っ、声でかいわアホ!
 そんな深く考えんとでええって」

「……いや、いないけど。」

「……ふーん。」

ちらっとユウジを横目で見ると、また何かを考えている模様。
…なんだ、何を考えているんだユウジ。



「……そっか。まあ、お前ガサツやから一生できへんかもしれんな!」

「え?何で私貶されてんの?
 …ユウジに言われたくないわ」

「どういう意味やねん。」

「そのまんま。」

そういうと、ユウジに小突かれた。
…痛いし、手加減しろよ。と思ったけど今は何となくユウジの顔が見れるような気がしなかったから下を向いたままでいた。




「(…彼氏おらへんのか…。って俺何きいとんねん!)」

「(…ユウジが何を考えてるかわからない。)」





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