「……あの、一つよろしいでしょうか。」
「あーん?何だ?」
「何で洋服が全部1万円以上なんでしょうか?え、0の数違くね?あ、1000円の間違えか。おけ、わかったわかった」
「……いっておくが、1万円以下の洋服なんて着る価値もねぇ。どれでもいいから、さっさと選べ。」
――とは言われたものの、どの洋服を選べばいいか分かりません。
部活が終わってからすぐに車にのせられて直行したのは大人のお姉さまが着そうな洋服ばかりのお店。
…うわ。クラクラしてきた、何だここ。
っていうか、1万円以下の洋服は着る価値がない?え?
500円、1000円のタンクトップやTシャツを買っては喜んでる私を侮辱してるんでしょうか?
なんだか泣きたくなってきた。
「とりあえず、上下あわせて10着は選んでおけ。」
「……っは?10着?!そんなの4着で全然間に合ってるよ、つかそんなの買ってどうすんの?!」
「――あーん?俺様に文句あんのか?」
「ありありだけど!」
何?見ず知らずの人間に、家の部屋譲ってくれたり洋服買ってくれたり、学校通わせてくれたり!私なら絶対しないけどね!
「…おい、えらばねぇなら俺様が全部選ぶぞ。」
「…いや、もうむしろ選んでくれたほうが全然いいんだけど……」
店内でそんなことを言ってると、跡部が何かに気づいて動いた。
「おい、こっち来い」
「え?あ、わ――!」
跡部に腕をがしっと掴まれて強制連行。何を見つけたんだ、こやつは!
スッ。
「…これはどうだ。」
そういって跡部が差し出してきたのは真っ白なワンピース。…どうやらうけ狙いとか、そういった類で差し出してきたのではなく、彼なりに真剣に考えてくれたのだろう。
「……いいんじゃないかな」
「ふん。まあ、一着目は決まったな。あぁ、言っておくがバッグや装飾品なども買っていくから覚悟しとけよ。」
「えぇぇ!いらないよ、バッグとか別に街とかいかないし…」
「あーん?黙って貢がれろ。」
今の聞きましたか?
私貢がれろなんて初めて言われました。…まあ、跡部がここまでいうんだから、仕方なく貢がれよう。それにテニプリの世界だ。
…きっと、夢なら覚めるに違いない。
「(おい、これはどうだ。)」
「(え、可愛い。ってか跡部何気に洋服選ぶ趣味いいね)」
「(ふん。当たり前だろ、俺様を誰だと思ってる)」
「(………。)」