「いつも清らかで清楚を装っているはずの優等生が何でこんなところでメイドの格好してにゃんにゃんしてサラリーマンにいいよられ「やめてー!わかった、ちょっと向こういこうか…!」
私はそういうと看板を適当なところに置いて財前の腕をつかんでぐいぐい歩いていく。
メイドだから目立つとかそんなこと関係ない。
「団子さんだー」
「あ、ほんとうだ」
「彼氏かなあ?」
「お似合い」
そんな声を無視して私は歩き続ける。
03
「はぁ…はぁ、」
来たのは路地裏だった。
ここなら人目もつかないし、話しもできるだろう。
「…先輩積極的っすね。」
「お前のせいだろーが。……っていうか、何でこんなところに?」
「…諸事情。ってことで、パシャッ」
そういって、気のぬけた表情の私を携帯で撮影する財前。
……っは?え?私今シャッターでとられたの?
「保存保存。そしてブログ更新」
冷や汗がたらりと伝う。
「あ…あのー」
「ん?」
「その写メ…まさかブログに載せないよね…?」
「え?ダメなんすか?」
「ダメにきまってんだろーが。ちょ、やめてよ…!」
そういって財前の携帯をとろうとするが、いとも簡単によけられる。
噂では顔はいいが性格に難あり、ってきいたことあるけどこれ本当だ。っていうか、難ありすぎなんだけど…!蛇に睨まれた蛙状態だよ、私…!
「……のせてほしくないんすか?」
「当たり前じゃん。」
「なら――」
そういうと、財前はすっと下を指差す。
……っは?
「地面がどうしたの?」
「そこにひざまずいて『にゃん』って言ってください。」
「――…っ」
こいつが私の弱み握ってなかったら今すぐにでもグーで殴るところなんだけどね。
けど、こんなメイド姿の私をブログなんかで広められたら…あぁ、死亡だ。
学校での私の評判はがたおち、っていうか冷めた目で見られるし…。
「やらないんすか?」
「や…やるよ、やればいいんでしょ…!」
私はスカートが汚れないように地面に膝をつけると、上目遣いで財前のほうを見る。
…っく、屈辱!
「……にゃ、にゃん…っ」
「――」
財前が一瞬目を光らせたのは気のせいだ。気のせいだといってくれ、誰か…!
「……萌え。」
「…っは?」
「萌えを感じたっすわ、今の。これでこそメイドや…っ」
そういうと、財前がぎゅーっと私を抱きしめてくる。
何故?!ぎゃー!こんなところファンの子に見られたら死亡フラグ!
っていうか、今すぐ離れろや、このやろ…っ!
ドンドンッ!
「やめて、離して…!」
「先輩、かわいー」
何が可愛いだ!どけ、今すぐどけ、っていうかもう蹴飛ばす。
ドガッ!
「うわ…って、何すんねん」
「それはこっちの台詞だゴルァッ。
っていうか、写メ消してくれるんでしょーね?」
そういうと、財前は不思議そうな顔をして小首をかしげた。
「え?何のことやろ?」
「………っは?」
「俺は、"ブログに写メをのせない"っていう約束しかしてませんけどね。」
「………。」
理不尽すぎるだろ、それ…!確かにその通りだけどさ…。
「じゃあ…どうしたら、消してくれるのよ…」
「………俺の、」
そういうと、財前光はワンクッションを置いて真顔で言ったのだ。
「俺のペットになって下さい。」
「だがしかし断る。」
「先輩に拒否権はないんやないん?」
そういうと財前がにっと笑った。
こいつ…!本当性格悪い!
「(っていうかペットってなんなわけ?!)」
「(秋葉原でグッズ以上にええもん見っけ。)」