「あ、あれってコスプレで有名な団子さんだ!」
「すげぇー、マジもんじゃん!」
さてついたぜ、秋葉原ああぁぁああぁぁ!
きたぞ、きちゃったぞ、私ぃ!
「あ…あの、団子さんですよね?
もしよろしければメイドの格好とかしませんか?」
「っへ?メイド?」
「はい!メイドです!お金はだしますし、
団子さんが接客したらこちらとしては物凄く助かるんです!」
――…んー、まぁ…。
別にちょっとぐらいならやってあげてもいいかも。
「うん、ならしますよ」
「本当ですか?!団子さんありがとうございますー!」
そういって、ぎゅっと女の人に抱きつかれた。
…メイドかぁ。
自分の好きなことしてお金稼げるだなんて物凄い幸せもんだよ。
「(秋葉原きてよかったー)」
02
「みなさん、メイドカフェへ入りませんかぁー!
可愛いにゃんにゃんしたメイドさんたちが、
あなたを待ってますよー!」
そういって看板をもって宣伝をする。
――それだけで自給1200円なんて半端ない。
私が今やってるバイトは自給850円だもん。
メイド恐るべし。
「あ、団子さんじゃね?」
「きゃー!生の団子さん!」
「すげーすげー!」
そういって、次々とカメラを用意して撮影をしだす輩達。
「………。」
いや困ったもんだ。
っていうか、自分の名の高さにはびっくりする。
――こんな性格のせいで、私はたいていのチャットには出回っているし、
何度も何度もオフ会を開いているうちに名が高くなった。
何より、コスプレの雑誌の表紙をとったことが一番の原因な気がするけど、どうなんだろう。
「団子さんの絶対領域!ニーソ萌ええぇぇええ!」
「え…えっと、ちょ…あの…っ」
「団子さん…!」
そういって、私の足に擦り寄ってくる中年のサラリーマン。
きええぇぇええぇぇ!
って、私の名前なんで知ってんだよ!
わけわからん!
これは蹴っていいのか?蹴っていいんだな?
よし、蹴ろう――。
そう思った瞬間だった。
ドンッ!
「あだ…っ、何をするんだ君!」
「邪魔。中年のおっさんがメイドに媚うってきもいっすわ。」
「き…!くそ、生意気なガキが…!」
そういうと、サラリーマンは舌打ちをしてどこかへ駆けていった。
…はぁ、助かった。
いい人もいるもんだ。
「あ、あのありがとうござ――」
います、といいかけた瞬間に私の思考回路が止まった。
何故?Why?あなたがいるの?
いやいやおかしいだろ、
っていうか同じ中学の人に出会うことなんて今までなかったのに、
どうしてどうしてどうして――?!
「……あ。」
「――失礼しま…、失礼……、ちょ、失礼させてくれませんかね。」
「……何してんすか?先輩」
そういって――財前光がにやりと笑った。