「田中さんってほんま美人」

「それに清楚やし、頭もええし運動もできるし」

「もう何もかもパーフェクトすぎてうちらにはかなわへんよなあー」

そんな噂話を耳にして、
思わずにやりと口端があがる。

って、いけないいけない…!

ニヤニヤしたら気持ち悪がられるだろ…!



「田中さん、あのこれ…!」

「……ありがとう」

隣のクラスの男子から手紙をもらい、
にこやかに微笑んだ。

すると、男は顔を真っ赤にしてどこかへ駆けて行く。



「田中さんまたラブレターか、すげぇなあ」

「まああんだけかわいいもんなー」



「(……みんな騙されてやんの、)」

みんな誰も私の裏の性格を知らないもんなあ。
いや、いいんだ。

自分のことをわかるのは自分だけでいいんだ…!


01





――白玉さんが入室しました。

団子:あ、白玉さんこんばんはー。

白玉:あ、団子さんもういたんすか。暇人っすね。

団子:あはは、まあ部活入ってないもんで!

白玉:あ、それより俺夏休み秋葉原いくんすよ。

団子:あ、奇遇ですね!私も夏休み中にいくんですよ、秋葉原!しかもコスプレして!

白玉:へえー、団子さんに会ってみたいっすわ。

団子:ですよねー。あ、どこらへんに住んでいるんですか?白玉さんは。

白玉:大阪っす。

団子:!!!!

白玉:っは?

団子:もうこれは運命ですね!私も大阪なんですよー!

白玉:……っげ。同じ県民なんて…。

団子:白玉さんって本当毒舌ですね!私はこんなにも嬉しいのに!

白玉:はいはい、まあ俺は用意とかもあるんで落ちますわ。

団子:あ、はーい!もしかしたら出会えたらいいですね!

白玉:結構っす。

――白玉さんが退室しました。




「……ふぅ、白玉さんってどんな人なんだろ?」

私はチャットをし終えパソコンをシャットダウンさせると、ぼんやりとそんなことを考えた。

――白玉さんと知り合ったのはつい一週間前くらい。
顔も性別も何もかも知らないけど、
…大阪市民って!

しかも、幸いなことに白玉さんはかなりのアニメ好き。


ニコ●コ動画の常連で、
プレミアム会員にもなっているらしく、
そっち系の話題をするとものすごくくいついてくる。



「(…どんな人なんだろ)」

できれば1回オフ会でも開きたいなあ。

同じ大阪市民なんだし。




――…っていうか、
白玉さんってコスプレとか好きなのかなあ。



そういえば私も明日から秋葉原へ旅立つんだよね。


そう思いながら、
手元の荷物を確認する。


――某ギャルゲーの制服を何枚かしまいこんだバッグ。

部屋を見渡すと、
PSPやらDSやらゲームがあちらこちらにほっつけられている。



「……こんな姿、学校の人たちが見たらどう思うんだろう。」


――学校での私の印象は、
『優等生』だ。

頭がよくて運動もできる。

…どちらかというと、尊敬されているほうで、
こんなことしているなんてばれたら……。




「……みんなどんびきだよね、」



学校での一番の親友にでさえこのことは内緒にしている。

――言って引かれたら嫌じゃん?
まあ、いいんだ。

これが私なんだもん…!



「それより秋葉原楽しみ!はやく行きたい!わくてかっ!」



秋葉原には私みたいなコスプレイヤー仲間がたくさんいる。
……はぁ、みんなに会えるだなんて本当楽しみ。



「(夏休みさいこー!)」



私はベッドに思い切りダイブしたのだった。

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