「花子ー!」

「ぎゃー!くるなひっつくな、変態が移るだろうがぼけえぇぇええぇぇっ!!」


くっつかないでください移ります変態が




「……はぁ、」

私は白石から逃げ切ると屋上へと出た。
ふぅ…屋上の風が涼しいなあ。

「……やだなあ」

昨日以来白石の顔を見ると胸がドキドキ言う。

なんていうか…張り裂けそうっていうか、
息苦しくなるっていうか。

白石が他の人と喋ってるの見ると、
もどかしい気持ちになるなんて私らしくない…。


「そこのお嬢さん」

「っひ…!」

「そんな驚かんでも…」

そういうと、
上から見下ろす形でこちらを見ている大男。

あ…あれって、さぼりで有名な――。


「……千歳君?」

「お、名前は知っとるんね?
 なら話しは早い」

そういうと、千歳君はすっと軽やかに上から降りてくる。
わー…その巨体からは見えない軽やかさ。

ビックリだよ、私。


「――白石蔵ノ介」

その単語に肩がびくっとなる。
え…なんで、その単語を…?

恐る恐る顔を見上げると、千歳君と目がばちっとあう。

恥ずかしくなって視線をそらすと、千歳君がニッコリ微笑んだ。



「…白石も随分手をやいとるたいね」

「……え?」

「"好きな子おるんやけど、どうやったら振り向いてくれるかな"って」

「…………。」




「――白石はバカみたいに一直線たい。
 ばってん、それはいい意味でも悪い意味でもとれるばい。

 けど、田中さんには分かってほしい。

 …白石の気持ちも、自分の気持ちも。」

「……え、自分…?」

「――自分に正直になっていいんじゃなか?
 田中さんのその気持ちは――」



千歳君がそういいかけてきたときに、
屋上のドアがグッドタイミングで開く。

…誰だよ、こんないいときに。

そう思い振り返ると、
白石がにこやかに微笑みながらこちらへ歩み寄る。



「やぁ、千歳」

「…いいタイミングできたばいね」

「……どういうことや?」

そういうと、白石は千歳君の腕をギリギリとつかんだ。



「えちょ…何して、」

「花子と二人きりで何しとったん…?」

「白石には関係なかとよ」

「――まあ、ええわ。本人に直接聞き出すし。
 なー、花子?」

そういって私のほうを見る白石は今までで一番きれいで、一番怖かった。



「えちょ、ま――」

千歳君に助けの視線を送ったが、
彼は「あはは」と苦笑をするだけ。

…うぅー。今の白石嫌だよ、何か怖いし!意味わかんないし!

まあ白石が意味わかんないのはいつものことなんだけどさ!





「(あぁぁああぁあ、連れてかれるぅぅううぅ!)」

「(田中さんがんばれっ)」




はぁ…私、どうなるんですか、これから。
何されるんですか。

っていうか、授業のチャイム鳴ったし…。



「……しら、いし?」

「………」

そういって無言状態の白石。
…わけわかんないよ。


「(…いつもなら喋りかけたら飛び上がるくらい喜ぶくせに、
 なんで無視すんのかな…)」


私がもっと白石の気持ちを理解できればいいのに…。






- 3 -


[*前] | [次#]
ページ:




「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -