「………。」

「………。」

しばらくの沈黙の後、白石は誰も寄り付かない放送室に入った。
――…、何でだろ。

ふたりになるとどうしてこんなにも息が苦しくなるんだろう。



「……なぁ、」

「……え?」

「千歳と…何話しとったん?」

そういって振り向く白石の目には、困惑と不安が入り混じったようなものを感じられた。

「……別に、何も――」

「……俺には話せれんことなん?」

そういって悲しそうに目を細める白石。
どうして…そんな悲しい顔をするの?


「しらい――」

「言わんのなら、キスするけどええん…?」

どどどどうしてそうなるの?!


食べちゃうぞが冗談に聞こえません




言おうか言わまいか困りはてている私をよそに、
どんどん顔を近づけてくる白石。


ドキドキッ。

「……ちょ、しらいし…っ」


こんな時でさえ胸が高鳴ってる。
あぁ、ドキドキいってる。

変だ、私変だ。



頬辺りの血が上昇しているのを感じられた。
汗ばむ手の平、
目をそらせないほどキレイな整った顔。


「――どうしてもいえんの?」


顔と顔の距離が数cmにまで縮む。



「……わた、し…っ」



苦しいよ、白石。
わかんないよ



白石を見てるとドキドキいうし、
頬の熱が上昇するのも感じられる。

こんなの変だよ。

認めたくないよ――。







「……はは、キスなんてじょーだんや」


そういうと、白石が一歩後ろに引いた。




「………っ」

「な?ドキドキした?
 あー、顔真っ赤やで!ほんま花子ってば照れ屋さんやねんから」


そういってニッコリと笑いながらいつものようにぼける白石。


――いつもなら『んなわけないだろ、どっかいけ!』だなんていい返せるのに。








ポロッ。





「な――っ」

頬を流れ落ちた涙。
おかしいな、私。




私…本当は、キス…されたかった…?





「花子――!」




白石が私を呼ぶ声など無視して全力で走った。
――後ろから白石が私を追いかけてくることはなかった。


何だかそれが、物凄く悲しかった…。

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