「んー、そこ!いや、ここ!いんや…後5cm!
 んんー、エクスタシー!」

ゲシッ!

どこ撮っとんのじゃボケエエェェエッ!

そういって、
私の机の周辺で必死な顔をして私のパンチラを是非ともシャッターチャンスにおさめようとしている白石の背中を思い切り蹴った。

…何があと5cmだ!

まあ堂々とやってるあたりが憎めない…わけがない。



「ちょっとくらいええやん。
 スカートとかけしからんもん履くほうが悪いわ。」

「黙れ。」

「あ、花子最近お口が悪いで!
 あんまそういうこといっとると、このバイブル白石…月にかわってお仕置kドガッ!


「……本当こいつしぶとすぎ…。」

蹴っても蹴っても、
どんだけ批難してもやってくる。

…こんなにイケメンなのに、もてるのに、
どうして私に執着してるんだろ。


「(意味がわかんない。)」


盗撮が犯罪って知ってますか?





「はぁー、今日もパンチラ撮れんだ。」

「…っていうのを、本人目の前でいいますか。」

「おう、当たり前やん。
 本人以外の誰にいうねん!」

「………。
 (わけがわかんない。)」

私はとりあえず、教科書を整理するとカバンにしきつめて席を立つ。


「あ、もうでるん?」

「……」

「無視とかせんといて!でもそこも萌えるなー、んんーっ」

「………、」

ただの変態だろこいつ…!




「……っていうか、あんたは部活いかなくていいの?」

「ええよ。」

部長だろうが。いいから行きなさい」

「いやや!花子が痴漢にあったらどないすんねん!」

「痴漢すんのはお前ぐらいだろぉがぁああぁぁああ!」


そういって、白石の胸元をつかむと思い切り持ち上げて地面に叩きつける。



ドガッ!


「……ふぅ、悪は滅びたし。」

よし、このまま帰ろう。
そう思い学校をでたのだった――。


.

..

...


……歩いて歩いて、
学校からだいぶ距離が離れた。

が、いいが――。


「(…私さっきから誰かにつけられている?)」

いや…勘違いだよね。
そう思い、クルリと後ろを振り返るとサラリーマンらしき男の人が立っている。


「(…ただのサラリーマンだよね)」


ほっと胸をなでおろし、また歩く。




「(ちょっと待てよ…このサラリーマン、一体どこまでついてくる気なの…?)」

さすがに怖くなり、
私は歩く速度を速めた。


タッタッタッ。


「(な…何でついてくるの?!)」

こんな時に限って、
白石の顔を思い出した――。


『花子危ないで、かわええから痴漢にあうわ〜』

『あはは、俺は花子の前だけ変態やから!』

『お願いします、下着ください。』





あぁ、あの堂々とした変態が今では愛おしいだなんて
私どうかしてるんじゃないだろうか。




「(とりあえず逃げなくちゃ)」

私は決心すると早歩きから全力ダッシュをする。


ダッダッダッ!



「――っち、待て…!」

そういって後ろから追ってくるサラリーマン。

やだ、怖い。
怖い怖い怖い。


怖い……っ!



ガシッ。

「きゃ……っ!」


腕をつかまれるとサラリーマンは私の太ももにそっと手をそえた。
ぞ…っ。気持ち悪い…っ。


「はぁ…はぁ、可愛いね…」

「ちょ、やめ――」

男の手が、太ももからお尻のほうへ向かう。

きゅっとつかまれ、思わずビクンと肩がはねた。



「や…だ、やだ…」

「くく…」

こんなことなら、
いっそのこと白石に犯されるほうが――。



ドガッ!


「ぅ…っ!」

後ろから男の悲鳴とともに、拘束されていた腕がとかれた。
――でも、なんで…?

そう思い後ろを振り返ると――。






「せやから、痴漢にあういうたやろ?」

そういって、汗だくで微笑む白石が立っていた。

――ドキッ。
バカだな、私。
こんなやつ、全然好きじゃない。

好きじゃないのに――。





「しら…いしっ、」

「ほないくで――」

そういうと、白石は震える私の手をとって走り出した。
走る走る走る。

後ろから男の叫び声みたいなものが聞こえたが、
そんなものは一切無視した。




――今白石が隣にいる安心感。




何でだろ。

変なの、白石って。
あ、変だから変態なのかな、白石って。




「……はぁ、ここまでくれば追ってこんやろ。
 それより大丈夫か?」

「え?あ、うん――」

そういうと、白石はぎゅっと私のことを抱きしめてきた。



「……怖かったやろ」

「……しら、」

「…俺が、そばにおるから。」




ポロリとでた涙は安心からか、はたまた別の感情からか――。


でも一つだけいえることは、





「(…白石がいてくれてよかった)」




ということだけだった。





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