あかん!ユウジあかん言うとるやろ!

「――うっさ、兄ちゃんもう少し声のトーンおとせんのかいやっ!」

『せやからなあ、兄ちゃんは何回もお前に言うたやろ?!
 金色はお前をたぶらかしとるんや!
 少女隊修行とかダラなこと言うとらんと、はよ俺の腕に帰って来い!愛しのマイブラザー!』

頼む、消えてくれ。
 


一氏家訪問



――兄弟って似るんだなあって思ってたけど本当に似るんだなって思います、つくづく。

ユウジとユウジ兄との電話の会話聞いてるとすごい二人の共通点がちらほら…。




「兄ちゃんうっさいわ、
 小春の悪口いってみ、今すぐナイフもって刺しにいくで!」

『おう、刺してみーや!
 こっちはまな板用意して待っとるわ!

「(いやいや、まな板でナイフ防ぎきれないだろ。二人ともバカだなあ。)」

あーだのこーだの、
小春についての討論を語って約1時間。


おーい、ユウジ?ユウジ君、あれ?

ちょ、通話代いくらかかると思ってんの?


堪忍袋のおもきれますよ、本当に。


「――もうええわ、ほな電話きるからな!」

『お前帰ってきたら覚悟しとけや。
 兄ちゃんが抱擁したる。

死なすど。

ブチッ。

少し苛立ち気味のユウジが電話をきって私に渡してくれる。
そんなウサギの姿で携帯渡されてもときめきしか感じません。

さっきまで電話代でイライラしてた自分が憎い。



「あー…あの兄ほんまありえんわあ。」

「蛙の子は蛙だね」

「今なんか言うた?」

嘘です、気のせいです。

なんか妙に静かだなーって思って後ろを見てみると、
私のベッドで横になって可愛らしくむにゃむにゃと寝ているくぅちゃんを発見。


…ユウジの体ってわかっていても、誰だって寝顔は天使だ。


「……なんや、くぅ寝てもうたな。」

「疲れたんだね。
 っていうか、睡眠時間は動物のときと変わらないのかもね。」

「……そうなったら困るわ、授業とか寝てもらっても困るし。」

ううーん…確かに困るなあ。




「あ、そうや!」

「ん?」

「着替えとか色々家に取りに帰りたいねんけど、ええか?」

「あ…うん、そっかそっかそうだね。
 おっけえ分かったよ、くぅちゃん寝てる間に行こうか」


だいぶ疲れているようだし、しばらくは起きないでしょう。

.

..

...



「……わー、家綺麗」

「っふん。それより、鍵あけてくれる?」

そういうと、ユウジが家の鍵を渡してくれる。
私は言われた通りに鍵を開けると家に入った。

ガチャッ。


「……誰もいないね」

「誰かおったら困るやろ。花子捕まるで」

「あ、それもそうか」


ユウジは床をぴょんぴょんはねながら二階へ上がっていく。
…っわー、ユウジファンの皆様ごめんなさい。
私一氏家へ訪問してます。

こんなところ見られたら本当撲殺もんだなあ…。


そんなことを思っていると、小さなユウジが「ここ!ここ開けぇや!」と扉の前でドンドンと足踏みをする。


「ああー、はいはい」

そういって扉を開けると、
男にしては随分と整理整頓された部屋が現れた。

……ユウジ几帳面そうだもんなあ。
なんか分かるかも。



「…何みとんねん。それより、俺が指示するからそこの袋につめてもってくで」

「はいはい」

袋の中に、携帯やお金、衣類や何故か裁縫道具まで持っていくことに。


「……ウサギの姿で裁縫できないでしょ」

「アホ、ウサギ様なめんなや。」

「(……。)」


裁縫…する気なのか。
ユウジのお笑いへ込められた思いは止まらないんだなあ。

部屋を見てみると、
あちらこちらに仮装道具が置かれてたりする。

――これ全部ユウジが作ったのかなあ。


っていうか、エロ本ないのかなあ。


「わちょ…!お前何さぐっとんねん!」

「え?エロ本さがし。」

「エロ本なんて持ってないわ!ちょ、変なもんひきだすなー!

ベッドの下をまさぐっていると、でてきたのは小春の写真。
……うわあ、マジいらない。

っていうかなんか小春には悪いけど、
心霊写真よりたち悪いよ、これ。



「あーもう!ええ加減にせぇよ!」

「いいじゃん、もう少しだkガチャッ。

「「…………!」」

二人でビックリして起き上がる。
やばい、誰か帰ってきた…?!


ドンドンドンッ。

階段をのぼってくる音。

やばい、隠れなきゃ…!

「っち、ベッドの下隠れろ花子!」

「えちょ、ま――ドガッ!


ウサギとは思えない脚力でキックされ、ベッドの下に転がる私。
いたた…。

ユウジはというと、そんな私の横へスライディングして隠れる。


ガチャッ。


「おーい、ユウジー?帰ってきたんかー?
 ……あれ?おらんなあ、人の気配したような気ぃしてんけど俺の気のせいか。」

兄の声らしき人物は、
部屋の電気をパチンと消すとそのまま下へ降りていく。

……とりあえず、一安心だ。


「…はぁ、お前がエロ本なんかさがしとるから兄ちゃん帰ってきたやろーが。」

「いやだって気になるじゃん」

「…っふん。」

それより――どうしようか、この状況。
いくらウサギとはいえ、暗くなった密室でベッドの下で二人っきりってなんだかドキドキする。

…電気つけたいけどつけれないしなあ。



「兄ちゃんやけどな、」

「え?あ、うん」

「多分今からお風呂入るはずやから、もう少ししたら家でて鍵かけてくで」

「あ、うん」


なんだか隣にいるユウジが頼もしくて、
私の胸は妙に高鳴っていた。



「(…ユウジ、かあ。)」


まあ…確かに、ちょっとはかっこいいのかもしれない。




- 6 -


[*前] | [次#]
ページ:




第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -