「――とはいえ、
一氏とこの黒ウサギが仲直りしたところで不安は多いで。」
白石がう〜んと首をひねる。
…確かに不安は多い。
っていうか、この二人(あ、一人ウサギか。)を一氏家に帰すのが物凄く不安なんですがどうでしょう。
「――あ、俺ええこと思いついた!」
そういって、ウサギ姿のユウジがぽんっと手の平をグーのこぶしで叩いた。
んんん?何をひらめいたんだろう?
「どうしたの?」
「花子の家で同居すれば全ておっけぇやんけ!」
同居生活?
「却下。頭割ったろか、ぼけなす。」
「って即答?!ええやん!
授業は俺とくぅの共同作業で口パクすればええけど、
さすがに家では通用せんで。それは。」
「……うっ」
確かにそれは痛い。
…学校でなら大丈夫そうだけど、家は…ねえ。
「お前どうせ一人暮らしやろ?」
「どうせってどういうこと?…けど、」
「ええやん!ほな決定、はい決定〜」
くぅちゃんのほうはというと、
わけがわからないがとりあえず「うーうー!」と喜んでいた。
…おかしい!おかしいだろ、同居って!
「――俺は反対や」
そういって、
白石が眉間に皺をよせてこっちを見ている。
……しら、いし?
「っは?何で?」
「ぅー?」
「だってな…。
お前ら、風呂上りの花子に会えるんやろ?
お湯に入りたてのほっかほっかになった体に、
ええ感じに濡れた髪の毛…しかも、花子のシャンプーのかおrドガッ!
「白石お前もういいよ!もういいから、帰れ!」
ダメだ!まともなことを言ってくれると期待してたのに、
白石はそういうやつじゃなかった!
あぁー、私がバカだった…。
「まあ…とりあえず、ユウジとくぅちゃんは私の家でひきとります。
あ、ちなみにペット禁止だからばれたら即退場。おけ?」
「はーい」「ぅー」
「よろしい。じゃあ、そこで倒れている白石さんを無視して帰りましょう!」
そういうと、私達は真面目に部室から出た。
…こんな変態待ってられっか!
「(花子ってほんま白石に容赦ないなあ。)」
ユウジは花子の腕の中でそっとそう思ったのだった。
.
..
...
「はい、ここが私のアパートです。」
辿りついたアパートを見て二人がなんだかそわそわしている。
「…思ってたより綺麗なとこやん」
「うー」
「…………何?
もしかして、ゴミ屋敷なみに汚いところだと思ってた?たいして他のところとかわんないし。」
いたって普通のアパートなのに二人はどうやら感動しているらしいです。
どういう意味だゴルァッ。
「あ…そういえば、家の人にユウジどうやって説明するの?」
「あー、それなんやけど、」
そういってユウジが自信満々の笑みで言った。
「少女隊修行で小春ん家に外泊する言えば通用するで」
「あぁー、なるほど!
その手があったか!」
そっか、そういえば監督からの命令がどーたらでユウジ、小春の家で外泊してたんだっけ…?
あの時はガチホモとかやめてくれよ。って冷めた目で見てたけど――こんなところで役立つなんて思わなかったなあ。
「…まあ、いつまでその手が通用するかやよな」
「……だね。このまま二人が戻らなかったら――」
いやいや、そんなこと考えちゃいけない!
ぶんぶん首を横にふって考えをふりきる。
…そうだ、今度東京へ行こう。
有力な情報者がいるんだよね。
「(っていっても、電車って動物ダメだったような…)」
まあ、そうなったらユウジにはカバンの中に入っていてもらおう。
それぐらいは仕方ないよ、うん。