「――っていうわけなんですけど、
 っていうか白石聞いてる?」

「おう、聞いてる聞いてる。」

「…で、まあ今深刻な状況なんだけどさ。
 白石聞いてる?

「おう、聞いてる聞いて「聞いてないだろぉが、ボケエエェェエッ!」ぐはっ?!」

とっても重要な会話を左から右へ受け流すかのように、
白石は必死に携帯をいじくっていた。

…こっちは人生に関わる凄い大事な話しをしているのに何さ!



「……よし、おっけーや。
 まあ、非常事態やから一応テニス部のみんなには連絡しといたで。」

「「え。」」

「ぅーぅー?」

べったりと私からくっついて離れないウサギちゃん。
うーん…可愛いんだけどさ、
正直うとい。

見た目がユウジだから物凄く突き飛ばしたいんだけど、
中身は純真だからこそ突き飛ばせない。

――ある意味ウサギっていう化けの皮を被った狼でしょ、これ。


夢じゃない



「ってーか…これがユウジかあ…」

「………おい、どこもっとんねん。」

白石はユウジの両足をつかむと上に持ち上げる。
――そのせいで、
上下さかさまになったユウジはプランプランと左へ右へと振り子のように揺れている。

…ウサギの姿のせいか、
そんな姿さえも可愛い。


「っじゃー!もう、
 血ぃのぼっとるやんけ!」

「ウサギなんに?」

どういう意味やそれ。
 …花子もたすけぇや!」

「だって可愛いんだもん。」

あーもうこいつら嫌や!

ユウジに乗り移ってしまったウサギのほうはというと、
私の体にべったりくっついて離れない。

――なんだろう、この胸きゅんきゅん。


ユウジだっていうことを忘れて
今すぐ抱きつきたい…あぁ、抱きつきたい…。




「きゅぅ…っ」

「わああぁぁああん!
 ギザかわゆすうぅぅううぅぅっ!

そういってユウジの体を思い切り抱きしめた。
なんだきゅぅって!
ユウジの見た目でそんなこと言われたら物凄いギャップを感じる。


「おい、ウサギわれぇ!
 俺の体で何かわいこぶっとんねん、今すぐぶっとばすど!」

「ぅーぅーっ!」

「……こらこら、二人ともやめんかい。
 花子はええ加減こいつから離れような。

そういうと白石が私とウサギの仲を引き裂いた。
…なんだよ、もっとラブラブさせてよ!

可愛いんだよ、もうっ!



「……はぁーこうなったらもうしゃーないわな。
 お前のことはめんどいからくぅって呼ばせてもらうで」

「ぅーぁー?」

「くぅ…。何でくぅ?」

私がそう聞くと、
ユウジは『よくぞ聞いた!』というどや顔をして両足でたった。

……ウサギの二足歩行。


異様な光景だ。



「色が黒いからくぅや!以上!」

「「って、そんだけかい!」」


白石と同時つっこみをすると、
くぅちゃんも「ぅー!」と喜んだ。


……はてさて、一体どうしましょうかね。
これから。



「……ユウジはどうすんの?これから。」

「んー…そこが悩みなんや。」


――ユウジが家へ帰宅しなかったら、
両親が必死こいて警察にでも連絡してしまうだろうし。

…それに、
ユウジのお兄さんって確かブラコンだったような気が。


――大切な弟が消えたなんて知ったらそれこそ大騒動だ。




「……くぅは日本語喋れんしなぁ。」

「ぁー?」

「………そうだ!」

そういって私にぴんっとあるひらめきがおきた。



「え?なんやなんや?」


「ユウジうさぎでも喋れるじゃん?
 だから、くぅちゃんには口パクだけしてもらって、
 ユウジが喋ればいいじゃんか。」


私あったまいいー!



「………ほんまにそれ、いっとる?」

「……え?」

「――花子、くぅを見てみ。」

そういって白石に注意を促されて気がつく。




「シャーッ!」


「……見事にユウジをきらっとるで。」

「こいつほんまは猫やろ。」

「………。」




こうなったらくぅちゃんを説得するしかないよね。
ファイトだ、私…!


「くぅちゃん…人参あげるからユウジと仲良くしなさい。



「シャーッ!」

「効き目ないやんけっ!」

ウサギの姿のユウジはというと、
流石に怖いのか白石の後ろに隠れてくぅちゃんを見ていた。


…なんだこの小動物の戦い。



「くぅちゃん…何かほしいものとかないの?」

そういうと、くぅちゃんが
すっと指さしたところは、




「………っは?花子?」

ポカーンと口を半開きにする白石。



「……それ、って?」

「ぅーぁー!」

「うわぁ…花子お前変なもんに気に入られたなぁ。
 ウサギの飼育係決定やん。」

そういってユウジがぷっと笑った。


……ごめん、笑い事じゃないんだけど。



「えちょ、他に何か別のもn「ぅーぁー!ああーあ!」……うん、わかった。分かったから、離れようか、くぅちゃん。」

そういうとくぅちゃんが大人しく一歩下がった。
あ、案外常識通じるんだ。



「……花子、どないするん?」

「…もし二人の体が元に戻ったら、
 くぅちゃんは私が飼います。
 それでOK?」


「ぅー!」


「……っは?それほんまにいっとるの?」

そういってユウジがビックリしたような目でこっちを見た。
…だって、そうしなきゃ色々とめんどうじゃん!

一歩も前進しないじゃん!




「……感謝しろよ、一氏ユウジ。」

「ほんま…恩にきるで!」



そんな…そんなウサギの姿で言われてもすんともキュンともしないんだからな!(嘘)



- 4 -


[*前] | [次#]
ページ:




「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -