「――というわけでありまして、キミ達はそれぞれの道を…」

そういって、校長が
長々しく文章をよんでいる。

…私はイスに座りながらぼんやりと考えていた。



「(私もあの子達の卒業姿
 見たかったなぁ。)」

来年も担任受け持ちたかったなぁ。





…そんなことを思っていると、
あっという間に卒業式は終わってしまった。

――次は離任式がある。

そこで…私は、
彼らに言わなくちゃいけない。

言わなくちゃ…言わなくちゃ。

卒業式そして離任式へ



ガラッ。

卒業式が終わった次の日、
教室へ入ればいつもどおりみんながガヤガヤ騒いでいた。

あぁーうるさい。

相変わらずの騒がしさにあきれ返ってしまいそうだ。



「(…次受け持つ先生が可哀想)」

なんてこと、思ったりもしてしまう。



「あー、ほら!みんな席に着いてー」


「あ、花子せんせー、おっはよー!」

そういって遠山が後ろの席で元気に手をぶんぶん振ってきた。
…これも、後数日で終わり。

後…ほんのちょっとなんだなぁ。


ズキンッ。

あ、胸が痛い。


「花子せんせー、一氏うるさいねんけど」

「なな?!何でや、小春ぅ…!」


ズキンッ。


胸が、ギシギシと軋んでいる。




「……あ、花子先生俺青汁飲みたいから買ってきてーや」

「そんなもんどこにうっとんねん!」

「…先輩ら、何アホなこというてまんねん…。」


ズキンッ。

壊れてしまいそうだ。




「――花子先生?」

千歳のその声で、
私は意識をはっとした。



気がつけば、みんなが私に注目していた。



「花子先生、どないしたん?!
 ワイなんかしてもーた…?」

そういうと、
遠山が駆けつけて私の頬に流れた涙を優しくぬぐってくれた。

…違う、遠山は何も悪くない。

誰も…悪くないんだ。



「……あの、ね。みんな席に着いてくれる?」

そういうと、
みんなそれぞれ顔を見合わせて静かに席についた。

……こんな学校生活も、後ほんの少し。





「……みんなに、
 今まで内緒にしてたんだけど…さ。

 私、離任するんだよね」


「……え?」

ポカーンとする忍足。


「……嘘や、花子先生、嘘やろ…?」

そういって困惑する遠山。
――いくらもうすぐ春だからって、エイプリルフールはまだだ。

それに…こんな物騒な嘘、私はつかない。


「……どこの、中学いくん?」

「……県外。」

「んな――?!なかなか会えんくなるやん!」

「だから…!
 だから…、みんなに…なかなか言えなかった……の…っ、」

ボロボロと涙が零れ落ちて教卓の上に落ちていく。



「……花子先生、」

白石が私の名前を切なくよんだ。





「………ごめんね、みんな。」


そういう私の体は震えていた。

私を見ているみんなの目は、とても悲しんでいた。
とても、とても――。














「(サヨナラだなんて嘘だっていって。)」

みんなと本当はまだいたいんだって、
私…本当にそう強く思ったんだよ。





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