「……あれ?ここどこ?」

目を覚ませば、
全く見知らぬ土地。路線。
――駅。

「……ここ…って、」

あ。あぁああぁぁあ!
完全に乗り過ごしてたああぁぁああぁぁ!

電車乗り過ごしました



携帯電話を開くと、
何件もメールが来ていた。


送信者:白石
件名:NO TITLE
―――――――――
先生、何しとらん?
俺ら超暇やで。
―――――――――

あぁーなんだこの気楽そうなメール。
こっちはどこか分かりもしない場所へきたっていうのに。



送信者:財前
件名:NO TITLE
―――――――――
花子先生何してはるんすか?
まさか迷子じゃないやろーけど。
―――――――――

ごめん。まさかの迷子だよ、財前。

っていうか、こいつら…
何で私のアドレス知ってるんだろ。
教えたつもりないんだけどなあ。



送信者:一氏
件名:NO TITLE
―――――――――
お前はよ授業でにこいや!
暇やんけっ。
―――――――――

送信者:金色
件名:NO TITLE
―――――――――
花子ちゃんおらんと
やっぱ寂しいわぁ〜、はよ来てぇや!
―――――――――

送信者:千歳
件名:NO TITLE
―――――――――
花子先生こんなら、
今日はずっとさぼるたいね。
―――――――――

送信者:遠山
件名:NO TITLE
―――――――――
花子先生〜、腹減ったで!
―――――――――

送信者:忍足
件名:NO TITLE
―――――――――
何しとるん?
授業さぼったらあかんのやでー!
―――――――――


何故こんなにたくさんのメールがきてんだ。
…いや、まぁ…悪い気はしないけど。



「……それより、
 今は場所を確認しなきゃなあ。」

四天宝寺からそんな遠くへ離れてないと思うけど…。


「――あ、あの!」

「はい?」

私はとりあえず紳士的な眼鏡をかけた人物に眼鏡をかける。
…ここは無難にノーマルな人に声をかけよう!


「ここはどこですか?」

「……ここ、ですか?
 立海の近くとなりますが…」

「じゃあ…四天宝寺はどうやっていけば――」

「えっと、四天宝寺でしたらね――」

そういって、
電車の路線を見ながらも丁寧に説明をしてくれるこの人。

…わぁ、優しい。


「…っていうか、あなた学生服だけど
 学校は?」

「…ちょっと風邪をひきまして、
 途中から学校へ行くことになったんです」

「あぁー、そうなんだ」

「…よろしければ、立海によりますか?」

「っは?えちょ…心遣いは嬉しいけど、
 さすがにそれは――」

そういうが、眼鏡の紳士は私の手を引いていく。
えちょ…ちょ、ま!
私には四天宝寺の生徒達に授業を教えるっていう任務があぁぁああぁぁ!


「ぎゃあぁぁぁ!離せ、離せえぇぇえ!」

「強制的にきていただきます。
 ――っぷり。」

っは?ぷり?
プリクラがどうしたんじゃあああああい!

こっちは急いでるんだよ!
っていっても、
もう学校には休むって連絡したんだけどね。



〜〜♪

ふと、携帯電話が鳴った。


ぴっと電話にでると、
声の主は一氏だった――。


『お前何で今日学校休んどんねん。』

「え?え、ま、まぁ…」

『お前のことやし、
 どうせ病気ではないねんろ?

 そんだけ元気やったら病原菌が逃げてくしなあ。』

散々言ってくれるじゃないか、一氏。
お前…四天宝寺帰ったら覚えてろよ。


「ちょっとかしてみんしゃい」

「はぁ?」

そういうと――。
さっきまで紳士とおぼしき姿はなかった。

あれ?あ、あ、あ、あれ…?
何度も目をこすってみるが、さきほどの眼鏡の人はいなかった――。

私の隣にたっていたのは、
銀髪の少年で。

…私の携帯をとっていってしまった。



「あちょ、返し――」

「お前さん、四天宝寺の一氏じゃな。」

『………あ?お前誰や?』

「っぷり。誰か当ててみんしゃい…」

『………。
 おい、花子先生。お前…何で、そないなやつとおるんや』

曇り気味の一氏の声のトーン。



『……はよ、離れぇ、花子せんせぇ』

「っは?え、ちょ、どういうこと?」

『ええから、そいつとおったらあかん!』

そんな一氏の声も虚しく、
私は気がつけば銀髪の少年の肩に担ぎ上げられていた。


「ぎゃあぁぁぁああぁぁあ!一氏、一氏ぃぃいいいい!」

『せんせ?!先生、どないしたんや?!』

「……っふ、一氏。
 ――女はもらっていくぜよ」

そういうと、ぴっと電話を切られてしまった。

……何をするんだこいつ!




「ちょっと、おろしてよ!」

「いやじゃ。」

「離せ、離せええぇぇええぇぇ!」

「立海につれていくぜよ。
 …どうせ暇なんじゃろ?暇つぶしでもしにきんしゃい」

って、そういう問題じゃないだろぉがああぁぁあ!
学校さぼって何してんだっていう話しになんじゃん!

っていうか、不審者にしか思われないって!



「お前さん、敬語は得意か?」

「え?あ、あぁ…え?」

「だから、敬語は得意かってきいとる。」

えぇーっと…まあ、これでも教師だし、
敬語は得意なほうではありたいんだけど。


「…うん、まぁ。」

「なら、お前は柳生決定じゃ」

そういうと――。
銀髪の少年は私を男子トイレへと連れて行く。

バタンッ。

個室へ入れられた瞬間に、
冷や汗がたらりと垂れた。

男子トイレ?個室?

ぎゃあぁぁぁあ!犯されるぅぅうう!


「ちょ、やめ――」

「――動くな。」

そういうと、
銀髪の少年はさっきかぶっていたと思われるヅラを私にかぶせてくる。

そして眼鏡に、立海の制服。

……って、何でやねん!


「……よし、鏡を見てみんしゃい」

「え?あ、あぁーうん…」

そういって鏡を見ると――。
ああぁぁあ?!さっきの紳士てきなあの人と同じ顔?!私が――?!



「……ちょ、あんた…何したの?」

「プリ。企業秘密じゃ」

「…………。」


そういうと、
彼は全く知らない誰かに変装をする。


「……あんた、全然顔違うじゃん。」

「まぁのぅ。今は不登校のやつに変装中じゃ。
 これでお前も俺も、自然に登校できる」


……って、こんな時間にか?

とは思ったが、
あえてつっこむことはしないでおこうと思った。

…まぁ、立海に紛れてみるのもたまにはいいのかもしれない。




「あ、お前さん敬語を使うんじゃぞ」

「え?あぁ、うん」

「で、もし困ったりしたらとりあえずアデューっていっとくんじゃ。
 いいな?」

「(アデュー?)え、あ、あぁーうん」

……こんなんで大丈夫なのかな、私。





バタンッ。

個室をでると、
おっさんがトイレをしていた――。



「ぎゃ「ッシ!」………すんませんっした。」

思わず叫びそうになったのを銀髪の少年が静止させる。
あぁー…生トイレ見ちゃった。
おっさんの見ちゃった。



「………男だっていうことを忘れたらいかんぜよ」

「あ…。は、はい」

とりあえず敬語!
とりあえずアデュー!

とりあえず、男なんだ!



「(立海わくわく。)」






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