「ワンワンッ!」

あ、わんこだ。
――そう、この犬っころとの出会いが全ての元凶なのでした。

迷い犬がきました


ガラッ!

ドアを開くと、
物をなげあったり話したりでうるさい連中たちがいた。

「あ、花子先生や〜!」

と、遠山を先頭にこちらに気付き始める連中だったのだが――。


「……花子先生、なんで…犬。」

そういって、財前がぼそっと呟いた。
他の連中も、
互いに顔を見合わせてまたこちらを向く。


「なんや〜、犬っころかわええなぁ!
 おいでおいd「グルルルルッ、バウッ!」ぎゃあぁぁぁああ、犬っころ噛んだあぁぁぁああ!

そういって、
犬に手をかまれた忍足が半泣きになって財前のもとへ帰っていった。


「……先輩ダサいっすわ。」

「な、なんやねん!なら財前は触れるんかいや!」

「………それとこれとは、」

「言い訳はなしやで!」

後をひけなくなった財前が、
しゃーなしといった感じで犬にそっと近づいた。


「……わんちゃーん…」

「グルルルルッ」

「ふっはっは!ほら、財前もきらわれとるやん!」

「マルガリーテ、その子はいい子だよー」

私がそういうと、
犬…いや、マルガリーテは財前への警戒心をなくし、
尻尾をぱたぱたとふりはじめた。

…なんていう可愛らしさ。


「……マルガリーテ?」

「うん、マルガリーテ。
 なんか校内でさまよってたから連れてきちゃった」

あ、マルガリーテが財前のほっぺをぺろりと舐めた!

「なんでー!なんでや、この犬っころ!
 なんで俺はダメなんや?!」

「謙也さんには愛情がないんすよ。
 犬には分かるんすわ。」

「ななな――?!
 腹立つ犬やっちゃなー!」

「グルルルルッ、バウッ!」

そういって、今にも忍足に飛び掛ろうとするマルガリーテの首根っこをつかんで静止させる。


「こら、マルガリーテ。
 忍足いじめちゃダメでしょ?」

「くぅーん……っ」

「………すっかり花子先生になついとるんすね。」

そういって、財前が呆れたようにこちらを見ている。


「…っていうか、何で名前しっとるんすか?」

「なんかね、首輪に"マルガリーテ"ってかいてあったんだよね」

「…………あぁ、そうなんすか。」

マルガリーテって、
名前長くね?って思ったけど、まぁそこは飼い主の愛情の表れなんだよね。


「……それにしても、
 その犬…マーガリンやったっけ?どないするん?」

「白石、マーガリンじゃなくてマルガリーテだから。

「まあ、どっちも似たようなもんやろ。
 …っていうか、お前教師やん。
 こんなところ校長に見られたら撲殺されるで」

「あっはっはー。でもあの校長優しいから、
 大丈夫だよ。」

まあ、髪の毛が薄い人に悪い人はいないんだ!
って信じてるからね…!


「……まあ、隠すしかないよね…。」

「せやなあ…おい、犬っころ。こっち。
 こっちや」

「グルルルルッ」

あぁ、ダメだ。
マルガリーテは心が卑しいやつには警戒心むき出しなんだね。

それなら白石や忍足に反抗期なのも頷ける。


「……なんや、俺もダメなんかいや」

「――っぶ、白石うけるわ」

「お前もやないか、謙也。」

そういって、
顔を見合わせてお互い肩を思い切り下げた。


「ワン、ワンッ!」

「うぉぉ?!なんや、この犬ぅぅううう!」

マルガリーテは、
何故か知らないけど一目散に一氏のところへ行くと思い切り押し倒し、顔をぺろぺろと舐める。

…どうやら、一氏を気に入ったらしい。


「やめええぇっぇえ!花子先生、助けろやああ!」

「いや、ほほえましいからさ。」

「何がやねん!
 小春、小春ぅぅうう!」

「ユウ君…犬に犯されればええねん。

「って、小春ぅぅうう?!今の小春ぅぅうぅううぅ?!」

まあ、こんな一氏見てると
本当に可愛く見える私の目は異常なのかもしれない。

――…犬と一氏の組み合わせ。
いいねえ。
ほほえましいねえ。

先生嬉しいよ、
一氏がこんなに感情をむきだしにしてるなんて!



「マルガリーテ、もっとやってあげて!」

「ワンッ!」

「ぎゃあぁぁぁぁああぁあああぁっ!」

「あはは、ユウジおもろー!」

「逆に同情するばいね。」

遠山と千歳がその光景を面白そうに見ていた。






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